○ソフトバンク２－０オリックス●

　ソフトバンクが今季初勝利。王監督は休養明け初、昨年７月２日以来の勝利を挙げた。先発・和田は緩急が絶妙で、八回途中まで３安打無失点の好投。後続もきっちり抑えて完封リレーを達成した。オリックスは打線が好機を生かせず、好投の吉井を見殺しにした。

　▽ソフトバンク・王監督　うちは今年は打線が売り物だが、基本は投手が良くないと。昨日は悪かったが、今日はよく投げ、うちのいい面が出た。連敗しなくてよかった。

　▽オリックス・コリンズ監督　とにかく和田の投球が素晴らしかった。どっちに転んでもおかしくない試合。チャンスをものにした方が勝っただけだ。

　◇ウイニングボールは孫オーナーに…王監督

　ダッグアウトから引き揚げてきたソフトバンク・王監督を追いかけてきたのは、殊勲の和田。「監督」とウイニングボールを手渡すと、王監督は「おっ、ありがとう。うん、大事に（する）」と握り締めた。王監督が胃がん手術のため休養する前の昨年７月２日以来、実に２６６日ぶりの「王ホークス」公式戦勝利。強気の投球で呼び込んだ。

　坂口、阿部真の連続三振で滑り出すと、五回まで無安打投球。１死一、三塁と初めての危機を迎えた六回も攻めの姿勢を貫く。初球から厳しく内角を突いたから、ラロッカは決め球の外角のフォークがまったく届かない。続くローズにも「ゴロのヒットなら仕方がない」と割り切って低めに集めたから、強振した打球も高く舞い上がっただけ。

　八回途中まで３安打８奪三振。テンポよく１１０球で片付けた。前日の開幕戦では絶対的エースの斉藤和がまさかの不調。だが「僕の投球を見失わないように心掛けた」と、嫌な流れを断ち切った。

　救援陣も踏ん張っての完封リレーでの勝利に、王監督も「やっとスタートって、とこだね」とホッとした様子。そして、巻き返しを独特の表現で誓う。「（ペナントレースも）オセロみたいなもんだから。黒のないシーズンはない。いくら白星を多くするか、の話」。

　ところで「大事に」と受け取ったウイニングボール。王監督は孫正義オーナーに贈るという。「僕は過ぎ去ったことは、いいんだよ」。大病を克服して手に入れた１勝の余韻にふけるでもなく、ただ前だけを見つめていた。【藤野智成】

　○…自慢の救援陣がまさかの崩壊を見せて開幕戦を落としたソフトバンク。同じ過ちは繰り返さなかった。２番手の藤岡は八回１死から登板。阿部真、ラロッカを切れのある直球で内野フライに打ち取り、前夜に４失点で敗戦投手となった借りをすぐさま返した。スライダーが生命線のサイドスローは「相手は踏み込んでくるので、内角にしっかり投げないと。しばらく出番ないかな、と思っていたので、ああいう場面で投げさせてもらって……」とにっこり。

　○…前日は豪快な２本塁打を放ったソフトバンク・多村が一転、柔軟な技術を披露した。三回２死一、二塁。オリックス・吉井に追い込まれてからの外角ぎりぎりの直球にうまくミートし、中前へ先制適時打。これが決勝点となり「強く打つより、安打狙いの軽打でいったのがよかった。吉井さんは制球がいいので難しかったですが」と納得の表情。ワールド・ベースボール・クラシック以来の王監督の下での勝利に「ホークス全体が喜んでいる。その中で貢献できて本当にうれしいですね」と笑った。

　○…ソフトバンク投手陣に４安打完封と抑え込まれたオリックスだが、今季初黒星にも収穫はあった。強打線を相手に２失点と投手陣が踏ん張った。中でも先発の球界最年長右腕・吉井は、七回途中で降板するまで５安打しか許さない好投。速球こそ１３０キロ台だが、丁寧にコーナーを突いて松中、小久保の主砲を無安打に抑え込んだ。三回２死一、二塁で多村に先制打を浴びたが、３球続けて速球勝負に出た外角球を中前に運ばれただけに「（多村は）緩い球を待っていたので作戦は間違っていない」と強気。五回２死三塁のピンチでは、俊足・川崎の一塁線へのゴロに飛びつきアウトにする気迫も見せた。「吉井は打者のタイミングも外していたし、打球がたまたまヒットになっただけ。内容は良かった」とコリンズ監督も満足顔。「今日は打てなかっただけ。いい試合だった」と、指揮官も敗戦のショックはなさそうだ。

毎日新聞　2007年3月25日　18時36分　（最終更新時間　3月25日　23時38分）