「ストレージにおけるユーティリティ・コンピューティングが本格化するまでに、まだ3年はかかる」。SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)向けスイッチ最大手である米ブロケード コミュニケーションズ システムズのグレッグ・レイス会長兼CEO(最高経営責任者、写真)はこう予測する。
ストレージの分野でユーティリティ・コンピューティングを実現すると、さまざまな機種のストレージをつなぎ合わせて、あたかも1台の巨大ストレージのように扱うことができるようになる。そうなると、ストレージを有効活用できる、設定を自動化することで管理の手間を軽減できるといったメリットが得られる。
レイス会長は、ユーティリティ・コンピューティングの実現に3年かかるとみる理由を以下のように説明する。「SANを構築している企業の多くは、業務や拠点ごとにバラバラに構築しているのが現状。まず、こうした散在するSANをつなぐことから始める必要がある。これに3年はかかるだろう。ユーティリティ・コンピューティングを実現するのはその後になる」。
ブロケードは「今後3年で、ユーティリティ・コンピューティングの基礎づくりを着々と進めていく」(レイス会長)。7月に日本で販売を開始した異機種、異ベンダーのストレージ機器を接続するためのSAN用ルーター「SilkWorm Multiprotocol Router」はその一つだ。「この製品を使えば、異なる拠点にあるSAN同士をつなぐことができる」(同)。
レイス会長は、「ユーティリティ・コンピューティングを実現するのに十分な性能や機能を追加することも重要」と話す。ブロケードは今後、(1)SANスイッチの通信速度を現在の2Gビット/秒から4Gビット/秒もしくは10Gビット/秒へと向上させる、(2)現在の主力市場である中規模SAN(ストレージ数十台)だけでなく、大規模SAN(同100台以上)から小規模SAN(同数台)までの各セグメントでスイッチ製品を強化する、(3)ブレード・システム用のSANスイッチ製品の拡充、といった施策を実行していく。
ユーティリティ・コンピューティングに必要なソフトに関しては、パートナー企業と協力しながら開発していく。ブロケードはパートナーに対して、ソフトを動作させるプラットフォームとしてSANスイッチを提供するほか、SANスイッチの管理情報をベンダーが活用できるようAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を公開していく。レイス会長は、「ユーティリティ・コンピューティングのようにSAN上のストレージ機器を一元管理する必要がある場合には、各機器を接続しているSANスイッチを活用するのが最も有効」と強調する。 |