オムロンとオムロンソフトウェアは8月5日、ICタグを利用したブタ肉向けの生産履歴システムを発表した。このシステムを使うと、食用ブタへ与えた飼料や病歴、投薬情報を個別に捕捉できるようになる。食用ブタは複数頭をまとめて管理するロット管理が主流であるため、問題が起きたときに個体の情報を仔細に把握することが難しかった。
バーコードではなく、ICタグを用いるメリットは三つある。一つは、病歴や投薬情報を直接ICタグに書き込めること。オムロンソフトウェアCS事業部RFID拡業グループの松藤浩二主任は、「履歴情報として残す意味もあるが、農家の方がその場で以前の病歴などを参照できるメリットがある」と説明する。バーコードは新たな情報を書き込むことはできない。
もう一つが、読み取りが容易なことだ。ブタは飼育所内で暴れるため、1頭1頭捕まえてバーコードを読み取るのは重労働。ICタグを用いれば、ある程度離れたところから読みとることが可能になる。
3つ目は、ICタグがバーコードより汚れに強いこと。バーコードの場合、表面が土などで汚れるとたちまち読み取れなくなるが、ICタグは電波を利用して読み取るので、その心配はない。
運用の仕方としては、まず生まれたばかりのブタの耳にICタグを取り付けることから始まる。このICタグは利用する周波数が13.56MHz帯のもので、樹脂で表面を強化している。樹脂で覆うのはブタにかまれても壊れないようにするためだ。
ブタは成長の度合いによって、きゅう舎を変えたり、管理するブタの群れを分割したりする。そのたびにブタに付いたICタグを読み取って、どのきゅう舎にどのブタがいるかを把握する。与えた飼料に関する情報はICタグには持たせず、ブタがどのきゅう舎にいるかという情報とサーバー側でひも付けする。耳に付いたICタグはハンディ型のリーダー/ライターでデータを読み込む。読み込んだデータは、無線LANで農家のパソコンへ取り込まれる。その後、インターネット経由でデータベース管理サーバーへ送る仕組みである。
オムロンが食肉ブタ向け生産履歴システムを開発する背景には、農林水産省が7月25日に施行した「生産情報公表豚肉のJAS規格」がある。これはブタの生産者に、ブタの生年月日や与えた飼料の名称、使用した医薬品の名称、食肉処理した年月日、生産者の名前や所在地などを記録することを義務付けるものだ。松藤主任は、「JAS規格に対応することはもちろんだが、システムを使ってしっかりブタを管理している方が消費者への訴求力があると考える農家が増えてきている。その需要を狙いたい」と語る。
開発するシステムは、今年5月から愛知県豊橋市の豊橋飼料とアドバンスフードテックで共同で実施した実証実験を基に開発している。販売開始は今年12月末の予定。 |