携帯電話機や携帯電話機向けの通信モジュールを2003年に1億2000万台以上製造したEMSのフィンランドElcoteq Network Corp.は,日本の携帯電話機メーカーを対象とした製造請け負いビジネスの拡大する戦略を打ち出した。国内市場だけでなく海外市場での販売拡大を狙う日本メーカーに対し,GSM/GPRS方式対応端末の共同開発を視野に入れている。同社の日本法人であるエルコテックジャパンの代表取締役Mika Makinen氏に詳細を聞いた。(聞き手=大久保 聡)
――日本メーカーに対して,どのようなサービスを展開する予定なのか Makinen氏 仕向け地ごとにODMという形で端末の設計から製造までを請け負うだけでなく,日本メーカーが自社で設計や製造した部品を組み込んだ端末を製造したり,当社の端末のプラットフォームの一部,例えばGSM/GPRS方式に対応した通信モジュールだけを日本メーカーに出荷したりと,あらゆるサービスの形態を考えている。 PDC方式に向けた端末を中心に展開してきた日本メーカーは,これまで端末開発のほとんどを自社で手掛けてきた。しかし,海外に製品展開するとなるともはや自社だけですべてをまかなうのは無理である。例えば,GSM/GPRS方式に対応した通信モジュールなどが必須になる。製造能力を強化するためには,製造拠点を確保しなければならない。日本メーカーは自社のコア・コンピタンス技術を生かせる部品を自社開発し,それ以外を外注するといったことがこれから頻繁に起こるとみている。このような要求にこたえたい。当社が製造したGSM/GPRS方式に対応した通信モジュールに日本メーカーが製造したW-CDMA方式対応の通信モジュールを併せて搭載した端末を当社の工場で製造するといったことも可能になる。
――Elcoteq社の製造能力や実績について聞きたい Makinen氏 2003年は1億2000万台以上の端末,あるいは通信モジュールを製造した。フィンランドNokia社や英SonyEricsson Mobile Communications ABといった大手端末メーカー向けが全体の60%~70%を占めている。GSM/GPRS方式に対応する端末の実績は十分と自負する。製造拠点については,できる限り仕向け地の近くになるように設けている。欧州や中国,北米などに7拠点保有するほか,2004年第4四半期~2005年第1四半期にインドに新工場を設立し,2005年秋にはロシアに工場を追加する。南米に工場を設けることも視野に入れている。工場の新設は,BRIC諸国(ブラジル,ロシア,インド,中国)での携帯電話機市場拡大を受けてのものだ。日本メーカーが当社の製造請け負いサービスを使えば,これら世界的に広がる工場を利用できる。
――どのような端末のプラットフォームを備えているのか Makinen氏 自社で保有する「Elcoteq Design Center」(EDC)が開発したプラットフォームと,当社が投資する世界最大の端末設計・開発会社「Cellon」のものの2系統がある。これらのプラットフォームの大きな違いは使用するチップセットである。EDCの開発品は主に米Freescale Semiconductor Inc.(以前の米Motorola,Inc.の半導体部門)のチップセットを使い,Cellonの開発品はオランダPhilips Semiconductor社のチップセットを採用する。 EDCのプラットフォームは,2004年後半から次の2品種を量産が可能になる。表示色4000程度のカラー液晶パネルなどを搭載し,デュアル・バンド対応でほとんど通話機能のみの端末に向けた「ULCP」と,6万4000色表示で128×160画素のパネルやカメラ機能といった機能の搭載も可能で,GPRS Class 10対応のトリプル・バンド端末に向けた「Rhone」である。Cellonでは,デュアル・バンド対応の「Entry」,VGAのカメラ機能などを搭載できるトリプル・バンド対応の「Low-tier」,さらにメガピクセルのカメラ機能などを使えるようにした「Mid-tier」,Mid-tierをより発展させてQVGAの液晶パネルなどを備える「High-tier」を用意した。EDCやCellonのいずれのプラットフォームも,日本の端末メーカーが開発した部品を搭載も可能。あるいはプラットフォームの一部分だけを出荷することにも対応する。 |