太陽誘電は,追記型DVD媒体の記録層の熱的特性などを自動的に検出する技術「AUTOSTRATEGY」を開発した。信号を書き込むレーザ光の強度だけでなく,波形(ライト・ストラテジ)も自動調整できる。
DVDの記録媒体は,品種によって記録層の特性が大きく異なる。このため現在の記録装置には,世に出回っているDVD-R/+Rの各品種に対応した数多くのライト・ストラテジを事前に登録してある。記録の際には,媒体に書き込んである固有IDから品種を割り出し,該当するライト・ストラテジを選んで記録を行っていた。
ただし,この方式には3つの問題がある。1つは,装置メーカーが大量の媒体に対して個別にライト・ストラテジを用意するのに膨大な手間がかかる点である。ライト・ストラテジの調整には,1品種当たり数日を要することがあるという。
もう1つは,ライト・ストラテジが記録装置に登録されていない媒体が挿入された場合,高品位の記録が難しくなる点である。例えば,記録装置の出荷後に製品化したDVD媒体には対応できないことになる。インターネットなどを通じて新しいファームウエアを配布することで,ライト・ストラテジの更新を行うことは可能だが,ネットワーク接続ができない民生機器などでは,更新用CD-ROMを入手するなどの手間がかかる。
そして最後の1つは,媒体1枚ごとに発生する特性の揺らぎへの対応が難しいことである。現状でも,記録層の空き領域に試し書きを行うことで,揺らぎに対応してレーザ光の強度を調節することがある。だがこれだけでは,特性の揺らぎが大きいと対応できなくなる。
記録層の熱分布を測定し,ライト・ストラテジを最適化
こうした従来の問題に対応するため今回,太陽誘電が開発したのがAUTOSTRATEGYである。媒体にレーザ光を照射したときに,媒体の記録面にどのような熱分布が生じたかをパソコン用装置や民生機器用の光ヘッドで直接,解析できる。ライト・ストラテジは,記録層の熱伝導の性質に大きく依存する。このため,熱分布の情報から最適なライト・ストラテジを生成できるという。この解析技術の詳細はまだ明らかにしていない。
これにより,ライト・ストラテジが機器に登録されていない品種や,特性のバラつきが大きい品種でも高品位の書き込みができるという。最終的には,ライト・ストラテジの登録が必要なくなる可能性もありそうだ。このほか,記録ミスが生じやすい粗悪品をはじくことで,書き込みミスを未然に防ぐこともできるという。
太陽誘電は,記録装置メーカーにAUTOSTRATEGY技術を広くライセンスすることで,この技術を業界標準とすることを目指す。AUTOSTRATEGY技術を搭載した記録装置は,近日登場する予定だという。 |