米Altera Corp.は,マスタ・スライス方式のストラクチャードASICの新製品として「HardCopy II」を発表した。これまで同社はストラクチャードASICを,開発したFPGAの数量が見込まれる場合に,低コスト化の手段として提供する補助的な製品と位置づけてきた。今回のHardCopy IIを機にそれを改め,「FPGAやCPLDと共に,われわれの柱となる製品にする」(日本アルテラ)。
HardCopyという名前が示すように,同社のストラクチャードASICは,FPGAとの類似性を最大の売りモノとしていた(下載の図1参照)。APEXシリーズのマスタ・スライス版である,初代のストラクチャードASIC「HardCopy APEX」は,プログラム素子であるSRAMスイッチを除いたチップだった。Stratixシリーズのマスタ・スライス版である,2代目の「HardCopy Stratix」では,SRAMブロックの個数をFPGAより減らしたり,I/O数を減らすなどのスリム化を図った。こうしたアーキテクチャ上のスリム化とプロセスの微細化で,コストを低減した。100万ASICゲート相当品種のチップ単価は,0.18μmで作る初代のHardCopy APEXでは125米ドル,0.13μmで作る2代目 のHardCopy Stratixでは75米ドルになった。
今回のHardCopy IIは,同社にとって3代目のストラクチャードASICになる。HardCopy IIはStratix IIのマスタ・スライス版という位置づけだが,論理アレイを構成する基本単位である論理セルが異なる。Stratix IIではALM(Adaptive Logic Module)と呼ぶ論理セルをベースにアレイを構成していたが,HardCopy II向けにはマスタ・スライスに最適な構造の論理セルとして「Hcell」を新規に開発した。90nmプロセスで作るHardCopy IIでは,100万ASICゲート相当品種のチップ単価は15米ドルまで下げられたとする。
ALMよりHcellの方がコンパクトにできていることに加えて,Stratix II からHardCopy IIへ乗り換える場合にはALMの未使用部分はHcellにマッピングしないようにしてコストを下げている。すなわち,2代目まではFPGAの論理セルのなかに未使用部分があっても,そのままの状態でストラクチャードASICにマッピングしていた。HardCopy IIでは,ALMで実際に使っている部分だけを,Hcellにマッピングする。このマッピングをスムーズに行うためにAlteraはALMの利用状況に合わせたHcellのマクロセルを開発した。その数は数百種類に上るという。
無駄な回路は省き,ワイヤ・ボンディングも用意
また,2代目までは,類似性を強調するために,FPGAの品種ごとにストラクチャードASICの品種を用意していた。FPGAで使っていないアレイ部分やメモリー・ブロックはそのままストラクチャードASICにも存在していた。今回,上述した論理セル・レベルのムダと同様に,チップ・レベルの無駄を省くようにした。すなわち,大規模なFPGAに実装した回路でも,使っている部分だけをストラクチャードASICに実装する。元のFPGAの規模(品種)が違っても,同じ規模(品種)のストラクチャードASICに実装されたり,元のFPGAの規模(品種)が同じでも,別の規模(品種)に実装するケースが出てくる(下載の図2)。
Altera社はHardCopy IIのチップ出荷を2005年第3四半期から順次開始する。HardCopy II には5つの品種(マスタ・スライス)がある。ユーザーが設計可能なASIC換算の回路規模は最大220万ゲートである。対応する埋め込みRAM容量は最大8.7Mビット,入出力端子数は最大951個。全5品種の内,4品種は高速動作可能なフリップチップ・タイプのみに対応するが,1品種には低コストのワイヤ・ボンディング・タイプも準備する。 |