東京電力は,光ファイバを使った電流計測器(光ファイバ電流センサ)を横河電機と共同開発し,その試作品を「TECHNO-FRONTIER 2005」(2005年4月20~22日,幕張メッセ)に出展した。磁界によって光の偏波面が回転するファラデー効果を利用したもの。小型,既設機器への取り付けが簡単,電磁雑音に強い,長距離信号伝送が可能などさまざまなメリットがある。
ファラデー効果とは,磁界中の透明物質を通過する光の偏波面が回転する現象(偏波回転)。回転角は磁界の強さに比例し,磁界の強さは電流に比例する。従って,磁界を通過させた光の偏波面の回転角を測定することで,電流を算出できる。例えばコイルの電流を測る場合は,コイル内部に光ファイバを通すだけで済む。
光ファイバ電流センサの実用化には,これまで二つの課題があった。一つは,ファイバにかかる応力によって偏波回転が発生すること(光弾性効果)。これにより,計測した偏波回転角のうち,どの程度がファラデー効果によるもので,どの程度が光弾性効果によるものか分からなくなる。もう一つは,光ファイバの描く3次元曲線形状によっても偏波回転が発生すること。具体的には光ファイバのある地点のねじれ率を線積分した値が回転角になるという。
前者の問題は,光ファイバの材質を一般的な石英ガラスから鉛ガラスとすることで解決した。鉛ガラスの光弾性係数は0.45×10-9cm2/kgと,石英ガラスの350×10-9cm2/kgの約1/770と小さい。これにより,光弾性効果による偏波回転を実用可能なレベルに抑えた。
後者の問題は,偏波角の測定を透過型から反射型にすることで解決した。光ファイバの終端にミラーを付け,反射光を測定に使う。曲線形状による偏波回転はねじれ率の線積分なので,反射型の場合,往路の回転分が復路で打ち消される。ファラデー効果による偏波回転は光が磁界方向を通過するときにしか発生しないので,反射型でも変化しない。
この光ファイバ電流センサでは,±100kAまでの電流を測定可能。東京電力は,ハイブリッド車に使うモータや,SiC(炭化ケイ素),IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・ トランジスタ)といった用途を見込んでいる。今回の試作品は横河電機との共同開発だが,量産・販売を手掛けるパートナーになるかは未定。他企業からの引き合いも多いという。 |