JR東日本は首都圏で、地震計を設置する駅を増やす方針を決めた。東京で震度5強を観測した7月23日の地震の影響を検討した結果、地震計が少ないため、運転中止の基準に達しない路線でも長時間にわたり、運転を見合わせていたことが判明し、観測態勢の充実が必要と判断した。JRの担当者は「これで地震後の運転再開が早まります」と説明している。
JR東日本によると、在来線の地震計は9都県の86駅に設置され、うち東京都内は10駅。10駅の地震計のデータを、建造物の被害を予測できるSI値(スペクトル強度)を使って解析した。
この結果、都内で運転中止基準の12カインを上回ったのは▽山手線・浜松町駅(16.9カイン)▽常磐線・金町駅(12.5カイン)▽総武線・平井駅(12.4カイン)の3駅だけだった。徐行運転をする6カイン以上は3駅で、残る4駅は運転規制の対象にならない数値だった。だが、都心部は浜松町駅のSI値を判断指標としているため、東海道線や中央・総武線も3時間以上運転を見合わせることになった。
このため、JRは地震後、列車の運転再開をスムーズに行うには地震計を増やし、迅速に被害予測区間を絞り込む態勢が不可欠と判断。早ければ年内にも山手線の主要駅に地震計を設置する。現在、私鉄との乗り換え駅になっている中央線御茶ノ水駅や四ツ谷駅、山手・京浜東北・総武線の秋葉原駅などが増設駅候補に挙がっている。【斎藤正利】
【ことば】SI値 地震動が構造物に与える影響を数値化した指標。単位はカイン。地震の最大加速度を示す「ガル値」より、線路や駅舎、高架橋など鉄道施設の被害状況を構造物の性質に応じて的確に予測できるとされる。JR東日本は03年4月、在来線の運転規制の基準をガル値からSI値に変更。以前と比べ運転中止が約36%減ったという。東北・上越、長野の各新幹線も9月末からSI値に変更する。