殺人依頼や銃器、薬物販売など、インターネットの違法・有害サイト対策を進めている警察庁は、一般利用者からの通報を集約する「ホットライン」業務を、業界団体に外部委託する方針を固めた。団体内に技術力の高い専門の「情報センター」を設置し、違法サイト情報を一元管理する。警察庁は、警察への通報、有害サイトの削除措置の迅速化が図られると期待している。
情報センターは、専門の担当者を常駐させ、違法・有害サイトを発見した一般利用者などからの通報を受け付ける。サイトの内容を確認したうえで、銃器、薬物売買などの違法性が明確な場合には直ちに警察に通報。また、性的な感情を刺激したり、犯罪を誘発するような有害サイトの場合は、プロバイダーに勧告し、削除を要請する仕組み。相次ぐエアガンの改造部品取引の監視にも威力を発揮することが期待されている。
警察庁は来年度予算の概算要求で、専門職員の人件費など約3600万円を盛り込んだ。
同様のセンターは、英国では接続業者らが費用を負担した独立機関として96年に設立され、03年には約2万件の通報を処理。アメリカでは連邦機関の一部として98年に、ドイツでは各州が資金を出した公共機関として99年に設立されている。
同庁によると、04年にインターネットに関して全国の警察に寄せられた相談件数は7万614件で、00年の約7倍に急増。インターネットに詳しい捜査員も限られているうえに、同じサイトに関する通報が同時にいくつもの警察に寄せられるケースもあり、捜査員が相談への対応に追われ、事件捜査に割く時間の制約を受けるのが実情だったという。センターの設立によって、役割が明確に区分され、警察サイドも事件捜査に専念できるメリットが期待されている。
一方で、有害情報の判断については、「表現の自由」から運用には慎重を期する声も強い。作製方法を有害サイトから入手した山口県立光高校の爆発物投げ込み事件を受けて、今年6月に開かれた政府の関係省庁連絡会議(IT安心会議)は、有害サイト対策をまとめたが、「判断」は接続業者の自主規制に重点を置く形となった。
今回の情報センターは、業界サイドに判断を委ねた形だが、警察庁は「問題となるのはグレーゾーンの部分で、今後の検討が必要」としており、業界団体の代表者らも加わった有識者会議で議論を続ける。【河嶋浩司】