【ロンドン藤好陽太郎】世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(新ラウンド)の非公式閣僚会議が10日、スイスのチューリヒで開かれた。焦点の農業分野で、欧州連合(EU)は関税の上限を100%以下に制限する新提案を行った。一方、米国は反対してきた国内補助金の削減を容認する譲歩案を示した。新ラウンドは、12月の香港閣僚会議の大枠合意に向け新たな局面を迎えた形で、高関税の品目を多数抱える日本は極めて厳しい立場に追い込まれた。
EUのマンデルソン委員(通商担当)は関税引き下げ方式で、ブラジルなど途上国で構成する「G20」が提案した上限関税を100%とする案を支持すると表明した。米国は既に上限関税を75%とする提案をしている。
一方、米国は、EUなどから批判されていた国内補助金について、60%削減することを盛り込んだ提案をした。
日本など食糧輸入国で構成される「G10」は改めて上限関税に反対する姿勢を示したが、米とEUから包囲網を築かれた形で、米は補助金で譲歩する姿勢まで見せた。このため、「例外扱いが認められる重要品目をどれだけ認められるかという弱い立場に追い込まれた」(交渉筋)との見方が強まっている。