三井物産によるディーゼル車の粒子状物質除去装置(DPF)データねつ造事件で、元社員ら2人に詐欺罪の有罪判決を言い渡した26日の東京地裁判決は、大気汚染に悩む人たちも注目した。判決を最前列で傍聴した東京大気汚染訴訟の原告団副団長、石川牧子さん(49)は「判決は、事件が住民の期待を裏切ったことに触れていない」と語り、「都にもねつ造を見抜けなかった責任がある。これからも大気汚染の改善のため、人生をかけて取り組む」と力を込めた。
石川さんは22歳でぜんそくを発症。当時住んでいた東京都武蔵村山市の自宅隣が清掃工場の駐車場で、アイドリングするトラックが並んでいた。発作が起き、入院を繰り返す。排ガスが原因と分かったのは10数年後。完治する見込みはなく、今も薬は手放せない。
同じ悩みを持つ人たちが原告団を結成し、国や都などに大気汚染の差し止めと損害賠償を求めて96年に提訴。石川さんは98年の第3次訴訟から加わった。労働組合などに呼びかけ「ディーゼル車対策共闘会議」も結成。
昨年11月の事件発覚後、三井物産に「ぜんそくなどに苦しむ住民にはいまだ謝罪していない」と申し入れてきた。しかし、物産側は「弊社のDPFと、ぜん息悪化との因果関係が認識できない」と答えるだけだったという。【佐藤敬一】