24日に82歳で亡くなった俳優の根上淳(ねがみ・じゅん、本名森不二雄=もり・ふじお)さんの通夜が26日夜、東京都中野区の宝仙寺でしめやかに営まれた。7年以上に及ぶ闘病生活を、献身的な介護で支えた妻で歌手のペギー葉山(71)が取材陣に対応し、棺に「あなたへのラブレター」と題してしたためた手紙を納めたことを明かした。亡くなった夜には新婚旅行で買った思い出のブランデーを、口づけして飲ませたという。
瞳に潤んだ涙が、ほおをつたうことはなかった。「別れという人生のイベントだから、夫に対してもちゃんとやらなくちゃ」。目元をぬぐうこともせず、喪主として気丈に約500人の弔問客に対応した。
根上さんが亡くなった夜、ブランデーを注いだグラスを枕元に置いた。新婚旅行先の欧州で買ってきた思い出の酒だ。翌年の結婚記念日に飲もうと2人で決めていたが、これまでタイミングが合わず、開封されないままになっていたという。そのブランデーを口に含み、遺体と唇を重ねた。「ちょっとこぼれてしまいましたけど…。(遺体は)冷たくなっていました」。もう1度、2人で欧州を回るという夢はかなわなかったが、40年の夫婦生活への感謝を込めた粋な別れの儀式だった。
棺には愛用のステッキ、帽子、愛猫の写真などとともに、前夜にしたためた手紙を納めた。「あなたへのラブレター」と題し、「いろいろ書きましたが、その中でごめんなさいが3つあります」。ブランデーが飲めなかったこと、最後の入院生活が長かったため自宅に帰って大好きだった風呂に入れてあげられなかったこと、そして、脳こうそくの原因となった糖尿病に早く対処できなかったこと…。
「私は、さっそうとしたダンディーな彼のファンだった。俳優の根上は素敵だったけど、病気になった根上は悲しかった。闘病は、現実と過去のはざまでかっとうすることが何度もあった」。それでも、27日の告別式で最後の別れを告げるまでは、涙は流さないと決めている。「幸せな生活に、心から感謝している。長谷川一夫先生や勝新太郎さん、江利チエミちゃん、皆が迎えてくれるから、私はまだいきません」と笑顔さえ見せた。