「全国小売酒販組合中央会」(東京都目黒区、藤田利久会長)の年金共済事業に絡む約1億4000万円の使途不明金に、中央会の元事務局長(49)が深く関与した疑いが強まり、同会はうち約2500万円について業務上横領容疑で警視庁捜査2課に告訴状を提出した。同課は、架空名義の口座に入金した年金資金を元事務局長が着服したとみており、近く同容疑で立件する方針。あわせて不透明な会計処理が指摘されている同会の経理について全容解明に乗り出す。
調べによると、元事務局長は99年10~11月ごろ、年金資金から「脱退精算金」名目で2回にわたって計約2500万円を架空名義の口座に振り込み、着服した疑いが持たれている。
元事務局長が関与したとみられる「脱退精算金」の振り込みは、91~99年ごろにかけて約10回、計約9090万円に上っており、同会はこのうち時効(7年)にかからない約2500万円について告訴した。
年金事業に絡む使途不明金は、このほか、都内のコンピューターソフト開発会社への支出を名目とする3910万円と、元事務局長ら2人への個人貸し付け名目の1000万円があり、脱退精算金名目と合わせ、総額約1億4000万円に上る。いずれも元事務局長が振り込み事務を行っており、同課は、私的流用のほか組織的な裏金作りなど上層部の関与がなかったかどうかを調べる。
中央会は酒類の流通確保や普及などを目的に1953年に設立され、組合員数は約10万6000人(04年4月現在)。同会をめぐっては、海外の社債に年金資金約144億円を投資して破たんした問題や、同会の政治団体「全国小売酒販政治連盟」の政治資金収支報告書に、献金先の国会議員の収支報告書と食い違う記載があることが判明している。【三木陽介、石丸整】