秋の褒章受章者のうち、紫綬褒章を受けた俳優の渡哲也さん(63)=本名・渡瀬道彦=と作曲家の三木たかしさん(60)=本名・渡辺匡(ただし)、藍綬褒章で財団法人「小野田自然塾」理事長の小野田寛郎さん(83)に喜びを聞いた。
◇俳優の渡哲也さん…経験生かし、重病の子にエール
石原裕次郎亡き後の「石原軍団」のリーダー。「褒章を頂戴(ちょうだい)することには、ためらいと気恥ずかしさがございます。それにしても、泉下の石原に報告するのは、少々照れくさいですね」との短いコメントで喜びを表した。
65年に日活アクション映画でデビュー。テレビドラマ「西部警察」シリーズなどで活躍し、寡黙なタフガイ像を築いてきた。私生活では、直腸がんなどの大病に悩まされながら、今年もNHKの大河ドラマ「義経」の平清盛役やドラマ「熟年離婚」(テレビ朝日系)で注目を集める。
自らの闘病経験から、毎日新聞の小児がん征圧キャンペーンに賛同。96年から軍団を率いてイベント「生きる」に出演し、重い病気と闘う子供たちに温かいエールを送る。【井上卓弥】
◇作曲家の三木たかしさん…心に染みる言葉
テレサ・テン「つぐない」、石川さゆり「津軽海峡・冬景色」、わらべ「めだかの兄妹」、そしてミュージカル大作……どんなジャンルの曲を書いても、そのメロディーは心のひだをわけて染み入る。今年、「四季」のミュージカル「昭和の歴史三部作」が順次上演されている。「こんな年に……未熟なのに光栄です」と感じ入る。
音楽一族に生まれたが、「自らの意志で方向を決めたことは一度もなかった。時代ごとに出会った人との縁が私を作ってきた」と振り返り、なかにし礼、阿久悠ら先達に感謝する。ジャズバンドで歌手と編曲を始めたのは14歳。ラテンやロックにも身を置き「僕は音楽とともに、時に流されているのかも。何かを探し続けて」。この漂泊の哀感が日本人の魂にヒットし続ける。【川崎浩】
◇財団法人「小野田自然塾」理事長の小野田寛郎さん…自然の恩恵伝え
フィリピン・ルバング島で終戦後も約30年間、日本兵として暮らした経験を生かし、毎年夏に「小野田自然塾」を続けてきた。小中学生対象の2泊3日のキャンプで、野外炊飯や沢登りを通じて「生きること」や「自然の恩恵」の意味を語りかけてきた。
「自立して生活をしていく中で、子供に小さな自信を一つ一つ持ってほしい」との思いで、84年に始めた塾の参加者は約2万人。受章には「協力してくれたボランティアも含め自然塾全体でいただいたものです」と語る。
少年犯罪増加の背景に「社会で守らなければいけないことを親が教えていない」と考え、04年からは親子参加のキャンプを始めた。「受章で食い逃げしたと言われないよう死ぬまで働きたい」と意欲は衰えない。【種市房子】