インターネットをよく使う人の通信費削減には、「IP電話」が候補にあがってくる。インターネットを使って音声をやりとりし、今までの固定電話とは全く違う仕組みである。
◇ブロードバンド回線加入が必要
「電話」と名前はついているが、あくまでインターネットのサービスの一つ。ホームページを見たり、電子メールの送受信をしたりといった機能に加えて、音声自体をデータとしてやりとりできるようになったということだ。
IP電話は、インターネットの接続環境のうち、ブロードバンド(高速大容量の通信網)の環境で初めて可能になったサービスなので、利用するにはプロバイダー(インターネット接続業者)を通じ、ブロードバンド回線に加入することが前提となる。回線には、既存の電話回線を使うADSLという仕組みや、ADSLよりはるかに高速大容量のデータが送受信できる光ファイバー通信がある。
◇加入者間無料も各種の制限多く
「IP電話」が広く知られるようになったのは、02年4月に登場したソフトバンクBBのIP電話「BBフォン」がきっかけだろう。繁華街で大がかりなキャンペーンが展開され、加入者数は467万世帯(05年7月現在)にのぼる。ADSLを使ったブロードバンドサービスの一つで「加入者同士の通話は無料」というのがセールスポイント。ブロードバンドサービスの「ヤフーBB」に入れば、全員BBフォンに加入できた。
BBフォンは独自の仕組みで、加入者同士ならNTTと同じ番号が使えるが、ADSLを使うIP電話には、基本的に「050」で始まる電話番号が与えられている。
050番号のIP電話の最大のメリットは、同じIP電話サービスの加入者同士の通話は無料で、「固定電話へは全国一律3分8・4円」など、通話料が安い点だ。
だが、あくまでもブロードバンドの「おまけ」のサービスのため、制限が多い。たとえば▽ファクスが送受信とも使えない場合がある▽加入タイプによっては110番や119番、フリーダイヤルなど、かけられない電話番号がある▽通信状況によっては音声が途切れる--などだ。また、停電時は使えない。
◇目的と相手絞って
インターネット情報サイト「オールアバウト」の通信費節約ガイド、大串明弘さんによると、NTTの電話回線に大した容量はなく、データの送受信の増大は想定外。「ADSLは非常に無理をしたサービスで、軽自動車にF1エンジンを搭載して200キロで走らせるようなもの。NTTの電話局から遠くなるほど050番号のIP電話の音質は悪くなる。電話サービスとしての質は低く、固定電話に取って代わるものではない」と話す。
では、050番号のIP電話はどんな人に向いているのか。(1)緊急電話が通じる携帯電話を持っており(2)インターネットのためのブロードバンド回線が必要で(3)特定の相手と頻繁に電話をする--人だろう。例えば単身赴任者や、大学進学で家を離れる子どもなどだ。家族が同じIP電話サービスの番号を持っていれば、この間の通話料は無料になる。野村総合研究所の阿波村聡・副主任コンサルタントは「利用目的と通話相手を絞れば、非常にいいサービス」と話している。【中村美奈子】