テレビドラマ「3年B組金八先生」の舞台「桜中学」として長年使用されてきた東京都足立区の旧区立第二中学校跡地について、同区は公募で文教施設に50年間貸し出すと発表した。地元では校舎の一部を利用した「金八記念館」設置を望む声があるが、借り手は億単位に上る耐震補強工事費を負担することになりそうで、先行きは不透明だ。
一時は校舎を取り壊し、土地を売却する方向だった“桜中学”。東武伊勢崎線堀切駅のすぐ前にある約8300平方メートルの敷地は「駅に近いし、15億~20億円の価値がある。50世帯前後のマンションが建つくらいの広さではないか」と都内の不動産業者は話す。
校舎が取り壊されれば、記念館設立も難しい状況になるところだった。公募によって跡地を貸し出すことで、借りる法人などの考え方によってはドラマに何度も登場した校舎やその風景が残り、念願の記念館ができる可能性が出てきた。
「売却一点張りだった時期から比べれば、1歩前進」と、旧二中の元PTA会長で、金八記念館推進委員会の羽毛田順代表(52)。公募の受け付けは来年1月だが、足立区政策経営部政策課によると、既に専門学校を運営する2法人が関心を示しており、うち1つが金八記念館の併設を検討しているという。
問題は記念館にかかる費用。区は3棟ある校舎と体育館(計約5300平方メートル)を無償で提供するが、古いもので築45年以上たっており、校舎などを生かした記念館とするためには耐震補強工事が必要。政策課は「耐震補強で2億円弱はかかる。そのほか記念館を造るとなると、初期投資は3億から4億円になるだろう」。財政難で苦しむ足立区としては金銭的な援助には消極的で、費用は借り手側が全額負担することになる。
借地代は今月中旬に路線価などを判断材料にしながら、区財産価格審議会の答申によって公表。跡地の地価から単純に考えても借地代は年間数千万円となり、その上教育施設などを整えるとなると、借り手の法人などが記念館に多額の費用をつぎ込めるかどうかは微妙なところ。記念館併設を考えている法人は、何度も見積もりを行い検討しているという。