東京都板橋区の社員寮で6月に起きた管理人夫妻殺害・ガス爆発事件で、殺人と激発物破裂の罪に問われた元都立高校1年の長男(16)の初公判が9日、東京地裁(栃木力裁判長)であり、長男は「間違いありません」と起訴事実を認めた。弁護側は「事件は長男の生育歴、家族関係の問題に起因する家庭内殺人であり、精神面・心理面にいかなる影響を与えたのかを検討しなければならない」と保護処分を主張し、少年法55条に基づき、事件を家裁に移送するよう求めた。
認否に引き続き、長男は「お母さんについては何で殺してしまったのかと反省しています。お父さんについてはいろいろあったけれど、命を奪うことはなかった」などと今の心情を述べた。
検察側は冒頭陳述で▽長男は小学5年のころから父親の仕事の手伝いが増え、父親への不満を募らせた▽中学3年だった04年9月に父親をいつか殺そうと考えるようになり、親の寝ている時に首を切って殺すなどと友人に漏らすようになった--などと事件に至る経緯を詳述した。
動機については、事件前夜に父親から「おれはお前と頭の出来が違うんだよ」などと言われ、頭を手で押さえつけられ振られるなどしたことから「もう我慢できない」と思い、父親の殺害を決意したと指摘。母親については「母親だけを残しておくのもかわいそうだと考え、殺意を抱いた」と述べた。部屋を爆発させたことについては「火葬にするとともに、遺体を人に気付いてもらいたいと考えた」とした。
冒頭陳述などによると長男は6月20日朝、管理人室で寝ていた父親(当時44歳)の頭を鉄アレイで殴るなどして殺害し、母親(同42歳)も胸などを包丁で刺して殺した。その後、電気コンロの上に殺虫剤のスプレー缶を置き、約4時間後に加熱するようタイマーをセット。ガスの元栓を開いて室内にガスを充満させて爆発させ、社員寮の廊下の壁などを壊した。
事件当時、長男は15歳だったため原則検察官送致(逆送)のケースではなかったが、東京家裁は8月「保護処分で処遇する限界を超えている。罪の重さに見合った刑罰を与えて償いをさせることが重要」などと逆送を決定し、東京地検が起訴した。【佐藤敬一】