崇城大学(熊本市)の研究グループが、遺伝子組み換え微生物を使い、下水汚泥からプラスチックなどの基礎原料になるエチレンを作り出すことに成功し、実用化に向けた研究を進めている。15~17日に茨城県つくば市で開かれる日本生物工学会大会で成果を発表する。
エチレンは、プラスチックのほか、食品のトレイや化粧品、洗剤、医薬品などの原料としても使われる。国内では石油を原料に04年度で757万トン生産されている。同大生物生命学部応用微生物工学科の小川隆平教授(63)らは約20年前から石油ではなく、微生物を使ってエチレンを生成する研究をしてきた。
小川教授らは、遺伝子組み換え微生物を使う方法で、ブドウ糖や二酸化炭素などからエチレンを生成することにも成功しているが、原料が高価で大量生産できないなどの問題があった。そこで安価で生成に適したものを探し、下水を処理する際に発生する汚泥に着目。年々増加して処分に困っていることもあり、実験を始めた。
エチレンを生成する酵素の遺伝子を組み込んだ土壌細菌を下水汚泥に投入してエチレン生成に成功した。細胞壁を破壊する酵素などで汚泥を前処理することによって生成のスピードも上がった。
すでに実用化されている、汚泥からのメタン生成量に比べ収量が約20分の1しかなく、効率が悪いなど、実用化へ課題はあるが、小川教授は「石油はいつか枯渇する。研究の意義は大きい」と話している。【伊藤奈々恵】