【バンコク藤田悟】昨年末に起きたインド洋大津波から1年を前にタイの大学生らが津波被害を劇画で描く巨大本を制作している。津波の教訓を後世に残し、懸命に生きる被災児の姿を伝えることで被災者たちを励まそうという取り組みだ。
被災地を支援に訪れた経験のあるバンコク郊外ランシット大芸術学部の学生や教師約20人が6月から制作を始めた。
1ページは縦4.8メートル、横3.2メートル。手書きの絵にパソコンで色付けし、巨大なビニールシートに印刷する。劇画の題名は「津波の後の希望」。交通事故で父を亡くした失意の少年が津波にのまれてもがく中、死んだはずの父に手を差し伸べられて助かり、強く生きる決意をするという筋書きだ。
被災地の写真なども盛り込み計120ページ。各ページの色付けはほぼ終わり、仕上げの段階だ。来月中旬に製本し、26日の1周年記念行事に合わせて、約700キロ南の被災地パンガ県へトラックで運ぶ。世界最大の本としてギネスブックにも申請する予定だ。
被災地を2回訪問、子供たちに絵画を教えた同大生のニーラチャー・ソポルさん(21)は「子供たちは表面上は明るく振る舞っていても、絵には心の傷がにじみ出ていた。(巨大本には)希望を持って生きてほしいという願いを込めた」と話している。