○イングランド1-0エクアドル●
イングランドがセットプレーで決勝点を奪い、逃げ切った。
ルーニーを1トップにした新布陣で前半からボールを支配したが、思うように攻撃の形を作れずに苦戦。後半15分、左サイドで得たFKをベッカムが直接狙い、ゴール左ポスト際に決め、ようやく均衡を破った。
エクアドルは前半11分、相手DFのクリアボールを拾ったC・テノリオがゴール前に持ち込んで放ったシュートが、A・コールの好守でクロスバーをたたく不運。その後も数少ないチャンスを生かせなかった。
▽イングランド・エリクソン監督 試合を重ねるたびに、チームもルーニーも良くなってきている。ベッカムは試合を決めることができる選手であることを、改めて証明した。ベッカムが体調を崩していたって? 正直、試合前は本人から申告がなかったし、気づかなかった。でも、言葉に出なくても、後半、(ベッカムが吐く)様子を見て分かった。
▽イングランド・テリー ベッカムが体調を崩していたのは、正直、ほとんどの選手が気づかなかった。それぐらい、彼は動き回っていた。彼は完全な主将だよ。
▽エクアドル・デルガド 世界に向け、エクアドルの良さをアピールできた。W杯という大舞台で、一歩ずつ前進していることを感じる。
▽エクアドル・エスピノサ 顔を堂々と上げて帰るよ。個人的にはこの大会で、たくさんのことを学べた。
◇ベッカムの右足、8強へ導く
「黄金」の右足が、サッカーの母国・イングランドを2大会連続の8強へ導いた。
後半15分、ゴール左、約30メートルの距離で直接FKを得た。キッカーを務めたのはベッカム。インサイドキックでこすり上げるように回転をかけたボールは、きれいな弧を描き、4枚の壁を越えると急激に曲がり落ち、左ポストをかすめてゴールの中に収まった。
今大会4試合目での自身初得点。猛烈な勢いでルーニーが抱きついてきた。そのルーニーに、ベッカムは得意げな笑顔を浮かべ、「見たか」とばかりに指を向けた。「今季はFKであまり得点を決めていなかった。でも前夜、ルーニーに『ここ数試合、調子は最悪ですね』と憎まれ口をたたかれていたから、発奮したんだ」。イングランド選手初の3大会連続得点を決めた陰には、冗談を言い合える仲間との厚い絆(きずな)があった。
試合前からの体調不良に加え、蒸し暑さで脱水症状を起こしたベッカムは後半、プレーが途切れて立ち止まると、珍しくひざに手をあて、おう吐するシーンもあった。「前半はまだ平気だったけど、段々ときつくなってきた」。しかし、主将としての責任感が、弱音を吐くことを許さなかった。
FWオーウェンの戦線離脱により、4-5-1の急造布陣は機能したとは言いがたい。ベッカム自身も「ひどい試合運びだった」と認めるが、攻守でチームを支え続けた。守備の要のテリーは「みんなはベッカムのFKやパスばかりに注目する。でも、あまり目立たないが、彼ほどチームのために守備も頑張る選手はいない」とたたえた。
ベッカムは後半42分、ベンチに退いた。キャプテンマークをテリーに譲り、ピッチを去る際には、場内から万雷の拍手で迎えられた。ベッカムもすでに31歳。40年ぶりの優勝を目指すチームが苦しい時に頼れる主将になった。【安間徹】
○…大会前に右足甲骨折を克服したルーニーが、復帰3戦目にして初のフル出場を果たした。1トップの布陣も影響し、前線で孤立する場面が目立った。前半43分、後半4分と右足の踏ん張りが利かないのでは、と疑わせるプレーもあったが、本人は「調子は段々良くなってきている。あと必要なのはゴールだけだ」と強気だった。
毎日新聞 2006年6月26日 7時39分 (最終更新時間 6月26日 8時45分)