【ワシントン和田浩明】米ブッシュ政権がテロ捜査の一環として国際金融取引情報を極秘裏に大量入手していたとする米メディアの報道が、米国で論争を呼んでいる。政権支持派は「極秘情報の暴露は国家安全保障上問題」とし、刑事捜査が必要と指摘。一方、批判派は「報道は、行政府の独断専行の監視につながる」と主張している。ブッシュ大統領は26日、「対テロ戦争の勝利が困難になる」と、報道に対し強い不快感を表明した。
ニューヨーク・タイムズ紙は23日、米中央情報局(CIA)などが、国際金融取引情報を扱う組織「SWIFT」(本部ブリュッセル)から取引情報を入手していたと報道。米国人関連取引も含まれており、プライバシー保護を定めた米国内法に抵触する可能性を指摘したが、国際テロ組織「アルカイダ」関係者の所在確認などで成果があったことにも触れた。
ブッシュ大統領は26日の会見で「米国攻撃を狙うテロリストを追跡するには資金の流れを把握する必要がある」と語り、国際金融情報の入手は適法だと主張した。米下院国土安保委員会のピーター・キング委員長(共和党)は同紙の報道を「国家反逆罪ものだ」と激しく批難し反スパイ法違反容疑で捜査すべきだと、ゴンザレス司法長官に書簡で要求した。
同紙側は「国家安保上の配慮も慎重に検討したうえ、公的な議論が必要だと判断し報道した」と主張。有力市民団体「全米市民的自由連合(ACLU)」は金融情報の入手は「権力乱用だ」とブッシュ政権を批判している。
同紙は昨年12月に国家安全保障局(NSA)による令状なしの盗聴も報じている。金融情報の入手とともに、01年米同時多発テロ後にアルカイダなどの活動を把握するためブッシュ政権が導入したものだが、既存法制度との整合性に対する疑問や、行政府の監視役である連邦議会への報告が不十分だとの批判は根強い。
毎日新聞 2006年6月27日 11時03分