【カイザースラウテルン小坂大】サッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会は12日、1次リーグ3試合があり、F組の初戦でオーストラリアと対戦した日本は後半39分に同点ゴールを許すなど終了間際に失点を重ねて1-3で逆転負けを喫した。日本は18日にクロアチア、22日にブラジルと対戦するが、1次リーグ突破のためには後のない状況。32年ぶり2回目の出場のオーストラリアはW杯初勝利を挙げた。E組はFIFAランク2位のチェコが米国に圧勝し、優勝候補のイタリアとともに白星スタートとなった。
第5日の13日は日本と同じF組で優勝候補筆頭のブラジルがクロアチアと対戦。前回ベスト4の韓国が初出場のトーゴと、98年大会王者のフランスがスイスと顔を合わせる。
◇攻撃の交代カードが明暗分ける
パニックと言っていい。9分間で3失点した日本は自分たちを見失っていた。冷静な宮本ですら「気づいたら3失点をしていた」と話した。後半30分あたりを境にした攻防は、オーストラリアも緊張感が切れる寸前で、日本も目いっぱいの状況だった。そこで明暗を分けたのは、それぞれが切った攻撃の交代カードだ。
オーストラリアが最後の交代要員を使ったのが後半29分、188センチのアロイジの投入だ。すでに192センチのケネディを入れて力で押してきたオーストラリアが、さらに強引な攻めに出る。対して、日本は4分後に小野を投入して、3・6・1に変更した。「点を取りにいくという意識は伝わったが、そこを突かれた」と中村は言う。
中村、小野、中田英が攻め上がると、最終ラインをフォローするMFは福西しかいなくなった。3トップにして攻勢に出るオーストラリアに対して、守備のすき間をぽっかりと与えては、まずい。そればかりか、3トップ対策で約束した最終ラインとMF陣が間延びしないという前提も崩れた。
ジーコ監督の選手交代には、規則がある。いいときは選手を入れ替えないこと。そして調子のいい選手から使う。日本は自らのスタイルに徹したが、型にはまった戦いでもあった。一方のオーストラリア・ヒディンク監督は打つ手がことごとく日本の弱点を突いてきた。最後のパニックは、相手におびえて体が動かなかった状況に近かった。【小坂大】
○…絶好調だった。川口は前半から、何度もオーストラリアの鋭いシュートを止め危機を救った。後半38分、鋭いミドルシュートをはじくと観衆からはどよめきも。しかし1分後、暗転した。
左からオーストラリアのビドゥカ目がけて放り込まれた長いスローインに、川口選手は「失点の予感がした」と迷わずゴール前から飛び出した。中沢がマークしており、GKが飛び出すべきかは微妙な場面だ。
手をいっぱいに伸ばしたがクリアできず、ボールはゴール前に転々。オーストラリアは川口を密集に巻き込んで、もとの位置に戻らせなかった。駒野が倒れ、ケーヒルがシュートを放つと、ゴールマウス前には三都主しか残っていなかった。
川口は「あれは判断ミスではない。こぼれ球をクリアしなければならなかった」と話した。しかし、この1点が悪夢の始まりとなってしまった。
毎日新聞 2006年6月13日 10時37分 (最終更新時間 6月13日 10時38分)