毎年の誕生日が世界中で報道される人は数少ない。ミャンマーの民主化運動指導者、アウンサンスーチーさんはその一人だ。
先月19日、自宅軟禁下で61歳の誕生日を迎えた。3度にわたる軟禁は計10年以上に及ぶ。十数カ国で彼女の誕生日を祝い、解放を訴える集会が開かれた。バンコクでも亡命ミャンマー人ら約50人が集まりの場を持った。
彼らの多くは88年、民主化運動デモが武力で鎮圧された際、迫害を逃れ国境を越えてきた人たちだ。祖国を離れて18年。帰国は政治犯としての拘束を意味するから、いまだに帰還できる見通しはない。祖国民主化の願いを誕生日のお祝いに託す。
スーチーさんは今、医師以外の訪問者も許されず、読書と瞑想(めいそう)の日々を送っているという。「瞑想生活は彼女の精神をさらに強く鍛えているだろう」と、ある亡命ミャンマー人は祈るように話す。あのさっそうとした姿を目にできる日はいつ来るのだろうか。国を離れて久しいミャンマー人たちが再び祖国の地を踏めるのはいつのことなのだろうか。【藤田悟】
毎日新聞 2006年7月13日 12時30分