大手土木工事会社「水谷建設」(三重県桑名市)の脱税事件で、法人税法違反容疑で逮捕された元会長、水谷功容疑者(61)が、逮捕容疑となった福島県内の土地取引の際、所有者だった開発会社社長に対し、自ら仮装取引を持ち掛けていたことが分かった。実際には、この開発会社側から約1億円で購入しながら別の不動産会社から約8億円で買ったと見せ掛け、その後安値で売却し、巨額の土地売却損を計上していた。東京地検特捜部は、元会長が不正経理を主導したことを裏付ける事実とみている模様だ。
元会長は逮捕容疑を大筋で認めているという。
関係者によると、水谷建設は98年8月、福島県いわき市郊外の原野(約27万平方メートル)を、東京都千代田区にあった開発会社から約1億円で購入。この際、水谷元会長は、開発会社社長に「別の不動産会社を通じて買ったことにしてほしい」と依頼。開発会社社長も応じたという。
この結果、水谷建設はこの土地を、休眠中の不動産会社から約8億円で買ったように装い、そのうち約1億円が開発会社側に渡された。残る約7億円のうち2億円は、グループの建設会社を通じて還流し裏金化された。土地は最終的に03年7月、「小尾(おび)建設」(福島県二本松市、当時はさいたま市)に約2000万円で売却。脱税を共謀したとして8日に逮捕された同社社長の小尾文男容疑者(58)は、土地売却仮装後の01年6月、開発会社の社長にも就任していた。
架空の土地売却損計上により、水谷元会長は03年8月期決算で、約7億6000万円の法人所得を隠し、法人税約2億3000万円を免れたとして逮捕された。特捜部は、裏金の流れについて、元会長をさらに追及するとみられる。
毎日新聞 2006年7月13日 15時00分