パロマ工業(名古屋市)製の瞬間湯沸かし器に絡む17件の事故のうち、05年11月に東京都港区のマンションで、大学1年生、上嶋浩幸さん(当時18歳)がCO中毒死した事故で、排気ファンのコンセントが抜けて作動しない状態だったことが警視庁捜査1課などの調べで分かった。排気ファンが動かない場合、制御装置がガスの供給を自動的に止め、不完全燃焼を防ぐ仕組みになっている。同課は、制御装置が正常に作動せず、中毒死に至った可能性もあるとみて調べを進めている。
事故が起きたのは、浩幸さんの父正人さん(56)が所有する鉄筋コンクリート造り3階建てのマンション。3世帯が入居でき、以前は貸し出していた。大学進学を機会に1階に浩幸さんが入居し、2階には姉が住んでいた。
昨年11月28日午後11時過ぎ、布団の上で仰向けで倒れていた浩幸さんを姉が発見したが、CO中毒で死亡した。
正人さんによると、浩幸さんの部屋の湯沸かし器は、コンセントから延長コードをつないで使用。たびたびコンセントが抜けることがあったが、それでも湯沸かし器は作動していたという。このため、同課は不正改造が施されていた疑いもあるとみている。
また、姉の部屋の湯沸かし器も4年前に不具合が生じ、業者に修理を依頼した。しかし「部品の在庫がないので修理ができない。作動はするのでそのまま使用して構わない」との説明を受けた。
浩幸さんの死亡時に使用していた湯沸かし器について、正人さんは「コンセントが抜けても温まり方が多少悪いぐらいにしか思ってなかった」と振り返る。しかし、事故後の検証でファンが回らないとCO濃度が正常時の400倍にもなると説明を受け、初めて危険性を認識したという。「ほかにも事故が起きていることを知らされていれば、注意していたのに」と業者、行政の遅すぎる対応に不満を募らせた。
一連の事故の原因について、パロマ側は「不正改造により制御装置が作動しなかった」などと説明をしている。【鈴木泰広】
毎日新聞 2006年7月17日