東京都港区のマンションで男子高校生がエレベーターに挟まれ死亡した事故を巡り、保守点検業界では「大手メーカー系」と「独立系」の確執が再燃している。過去には、メーカー系が独立系に部品の「売り渋り」などをした独占禁止法違反(不公正な取引方法)で、公正取引委員会がメーカー系に排除勧告したケースもある。メーカー系は「法令順守を徹底している」と改善を強調するが、独立系は「点検に必要な工具を売らないなど、問題は解消されていない」と主張し、国土交通省に改善を求めている。
三菱電機ビルテクノサービス(東京都千代田区)は02年6月、公取委から排除勧告を受け応諾。独立系業者への部品販売で、在庫があっても納期を遅らせたり、自社向けの1・5倍の価格で販売することが、独禁法上、不当な取引妨害にあたると認定されたからだ。
東芝エレベータテクノス(現東芝エレベータ、品川区)も、部品の「売り渋り」で独立系業者(高知市)らから損害賠償を求められ、93年7月の大阪高裁判決で独禁法違反と認定され、確定している。
公取委は02年11月~03年9月、全国約1700のマンション管理組合を対象にアンケート(回答率42.7%)を実施。エレベーターは97.8%が主要メーカー5社製で占められ、保守管理もメーカー系が81.5%だったことが分かった。
しかし中には、メーカー系から独立系に変更しようとした管理組合が「部品調達などで支障が生じる」と言われるケースもあったという。このため、公取委は独禁法違反の恐れがあると業界に説明していた。
これに対し、メーカー系は「勧告などを真摯(しんし)に受け止め、納期と価格を改善した」(三菱電機ビルテクノ社)、「独立系から部品購入依頼があれば遅延なく要請に応じている」(日立ビルシステム)などと売り渋りを否定。一方、独立系業者でつくる「エレベーター保守事業協同組合」(東京都豊島区)は「確かに、売り渋りは大手5社系列ではなくなったが、それ以外ではまだある。大手でも、メーカーごとに異なる点検用工具を『自社開発』という理由で売らない社がある」と訴えている。【斎藤良太】
毎日新聞 2006年7月18日