国土交通省は、交通事故で重い後遺症を負い、植物状態などに陥った患者の治療を担う専門病床を札幌市と福岡市に新設することを明らかにした。07年度予算の概算要求に盛り込む。交通事故の重度後遺障害者を対象にした専門施設は本州に4カ所しかなく、北海道と九州の被害者への対応が遅れていた。
交通事故では死者は減少傾向にあるものの、救命医療の発達で、植物状態など最重度の障害者が毎年100人程度増えており、現在全国に約1000人いる。しかし、最重度の交通事故被害者を治療・介護するため、同省所管の「自動車事故対策機構」(本部・東京)が自賠責保険の保険料で運営する高度医療施設「療護センター」は▽仙台市▽千葉市▽岐阜県美濃加茂市▽岡山市--の4カ所に計230床しかない。
重い後遺障害を抱えても大半は在宅介護を強いられており、療護センターがない北海道と九州の患者は、同センターが提供する意識回復のための先進的な治療を受ける機会さえなかった。
このため国交省は療護センターの「空白地域」を解消し、被害者対策を強化することにした。ただ、国の行財政改革を考慮し、新たな病棟は建設せず、同機構が07年度から札幌、福岡両市の民間病院に運営を委託する形にする。両施設とも少なくとも10床以上を確保し、療護センター並みの「患者1人に看護1・3人」の手厚い医療を図る。【江刺正嘉】
毎日新聞 2006年7月25日