日本経済新聞社の元社員によるインサイダー取引事件で、証券取引法違反容疑で逮捕された元東京本社広告局社員、笹原一真容疑者(31)=25日付で懲戒解雇=は、勤務時間中に広告局のパソコンを利用してインターネット上で株を売買していたことが分かった。多い日は一日に100回以上の売買を重ねていたことが既に判明しており、社内調査に「趣味は株取引」と説明しているという。また、容疑に問われた5銘柄の売買の大半は、自己資金の数倍の売買が可能な「信用取引」だった。
関係者によると、笹原容疑者は04年3月ごろ株取引を始め、同年夏、株式分割など企業の重要な決定事項を全国紙などに掲載する「法定公告」の悪用を開始。紙面化前に内容を把握して株を購入し、紙面掲載後に株価が値上がりしたのを確認して高値で売り抜けていた。この際、広告局の共用パソコンなどを使い、通常の勤務時間中にもネット上での株の売買を行っていたという。
また、04年5月からは、手持ち資金の数倍の取り引きができる信用取引を始めた。信用取引では証券会社に現金や株式などを担保に差し入れることで、担保価値の数倍の売買ができる。容疑が持たれている5銘柄への投資額は計約2億4000万円で、信用取引の効果と、株取引で得た利益を次の取引に充てる行為を繰り返すことで、取引額を膨らませたとみられる。
笹原容疑者は特捜部と監視委の調べや社内調査に、こうした経緯を認めたうえで「株取引が趣味だった」などと説明。売却益を「特に何かに使ったこともない」と供述していることから、まさに「ゲーム感覚」(同容疑者)で株取引を行い、資金を増やしていたとみられる。【山本浩資、棚部秀行】
毎日新聞 2006年7月26日