大阪府池田市内の公園で昨年11月、50代の男性が自殺しているのが見つかり、府警の捜査で男性が「振り込め詐欺」の被害者だったことが分かった。「多額の負債を抱え、苦しい」という趣旨の遺書を残していたという。府警捜査2課は28日までに、関与したとみられる振り込め詐欺グループの川崎市高津区下野毛、塗装工、竹内針字(27)▽同、露天商、吉田義光(32)両容疑者ら8人を詐欺と金融機関本人確認法違反容疑などで逮捕し、両容疑者を起訴した。
調べでは、竹内、吉田両被告は昨年9月ごろ、他人名義の健康保険証を利用し、預金口座開設の申込書を偽造して銀行に提出し、他人名義のキャッシュカードなどの交付を受けた疑い。両被告は3月に起訴された。他人名義の口座は少なくとも四つあり、振り込め詐欺の現金の振込先として利用。他に逮捕された6人もこの口座を利用しており、振り込め詐欺に関与した疑いもある。
自殺した男性は1000万円以上の借金があり、資金繰りに追い詰められていた。竹内被告らは多重債務者リストから削除すると持ち掛け、複数の指定口座に金を振り込むよう指示。男性は昨年秋ごろ、計約480万円を振り込んだが、だまされたことが分かり自殺に追い込まれた。竹内被告らは少なくとも約40人から金をだまし取り、自殺した男性以外に計約600万円を詐取していた。
警察庁によると、振り込め詐欺は、(1)電話を利用して家族や警察官、弁護士らを装い交通事故の示談金などと称して現金を振り込ませる「おれおれ詐欺」(2)郵便、インターネットなどで架空の利用代金を請求する文書を送り、現金をだまし取る架空請求詐欺(3)融資名目で申込者から保証金などとして現金を振り込ませる融資保証金詐欺事件--の総称。今年1~6月末の振り込め詐欺事件は9136件発生し、被害額は約117億7200万円に上る。昨年同期より若干減少しているが、被害が後を絶たない状態が続いている。
おれおれ詐欺の場合、入手した名簿をもとに名前を確認してから親族を名乗ったり、災害被災者への寄付金を求める例など手口は巧妙化。警察庁は「すぐに振り込まずに連絡先を聞いたうえ、電話番号を番号案内で確認してからかけ直して事実を確認してほしい」と対策を呼びかけている。
一方、ヤミ金融を巡っては、大阪府八尾市内の清掃作業員ら男女3人が03年6月、JR関西線で電車にはねられ死亡。厳しい取り立てを苦に心中を決意したことを記した遺書を八尾市長らに送っていた。この心中をきっかけに、違法金利を要求しただけでも取り締まることができるヤミ金融対策法が施行されるなど法整備が進んだ。府警は、ヤミ金グループの元従業員ら6人を出資法違反容疑などで逮捕、海外に逃亡した幹部1人を含む2人を同容疑などで手配した。
毎日新聞 2006年7月28日