日本政府は28日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、日本のミサイル防衛(MD)システムの前倒し配備や日米共同運用体制の見直しを米政府に要請する方針を固めた。8月上旬にワシントンで日米外務・防衛担当者による審議官級協議を開き、協議を始める。
現行計画では、航空自衛隊の地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」は今年度末から、海上自衛隊のイージス艦搭載迎撃ミサイル「SM3」は来年度末に配備される。政府内にも「北朝鮮が弾道ミサイルの再発射に踏み切る可能性は高い」(防衛庁幹部)との見方があり、額賀福志郎防衛庁長官が事務当局に対応を指示した。
ただPAC3は、最初に空自入間基地(埼玉県)に配備されることが決まっているが、これは国内メーカーによるライセンス生産ではなく米国メーカーからの購入となる予定。配備前倒しには米政府の協力が不可欠となるが、米軍内でも中東などに優先配備させるべきだとの考えもあり、政治レベルで交渉しても実現性は不透明という。
SM3については、米海軍がSM3搭載で迎撃能力を持つイージス艦「シャイロー」を8月中に横須賀に配備することをすでに決定しているが、一方で海自がイージス艦「こんごう」にSM3の搭載作業を終えるのは再来年の3月ごろ。日本周辺にSM3搭載艦1隻という体制が1年半以上に及ぶのは避けたいことから、別の米イージス艦の日本への常時・臨時配備を求める。米太平洋軍はハワイにシャイローの他、「レイク・エリー」「ポート・ロイヤル」の2隻のSM3搭載イージス艦を配備している。
防衛庁では審議官級協議で、どの程度のMD体制見直しが可能か探ったうえで、額賀防衛庁長官が、ラムズフェルド米国防長官に直接、書簡を送り協力を求めることも検討している。【古本陽荘】
毎日新聞 2006年7月28日