水戸済生会総合病院(水戸市)で04年、茨城県鉾田市の私立高3年の少年(当時18歳)が、難度の高い心臓手術を受けた2日後に死亡していたことがわかった。より安全で一般的な手術方法もあり、茨城県警の依頼を受けた医療専門家は「執刀医の経験不足で引き起こされた」との意見書を提出。県警は業務上過失致死の疑いがあるとみて捜査している。
亡くなったのは同市上沢、プロパンガス販売業、石津洋さん(51)の長男、圭一郎さん。圭一郎さんは大動脈弁が正常に閉まらず、心臓に血液が逆流する「大動脈弁閉鎖不全症」で、04年7月に同病院に入院。同26日に心臓外科医の執刀で、本人の正常な肺動脈弁を大動脈弁に移植し、肺動脈弁に人工弁などを取り付ける「ロス手術」を受けたが、28日に多臓器不全で死亡した。
同症の手術では、大動脈弁に人工弁を取り付ける方法が一般的だが、ロス手術は血液を固まりにくくする薬を飲まなくて済むなどの利点がある。だがロス手術は国内で実施例が少ない難手術で、県警が依頼した専門家は「未熟な技能と乏しい経験の執刀医によって強行された結果、起こるべくして起こった」と批判している。
同病院の早野信也院長は「警察が捜査しており、現段階ではコメントできない」と話した。【三木幸治、山本将克】
毎日新聞 2006年7月31日