旧日本道路公団の財務諸表隠ぺいを巡る月刊誌「文芸春秋」の記事で名誉を傷つけられたとして、藤井治芳(はるほ)元公団総裁が発行元の文芸春秋や執筆した当時の公団支社副支社長らに1000万円の賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は31日、請求を棄却した。野山宏裁判長は「記事は、総裁解任を求める真剣な言論で、隠ぺいがあったとの内容も真実」と述べた。
争われたのは同誌03年8、9月号の「藤井総裁の嘘(うそ)と専横を暴く」「亡国の総裁を退陣させよ」と題した記事。公団が民間企業並みの財務諸表を作成したところ債務超過となり、これを隠ぺいした藤井氏は総裁として不適格などと報じた。隠ぺい問題は総裁解任(03年10月)につながった。
藤井氏側は「総裁から追い落とすための人身攻撃」と主張したが、判決は「多少の攻撃的表現が賠償の対象になると、分かりやすい言論の応酬ができず、国民に適切な判断材料が与えられない。訴訟ではなく言論で反論すべきだ」と退けた。【高倉友彰】
毎日新聞 2006年7月31日