初夏、オホーツク海高気圧から東北地方の太平洋側に吹く冷たい東風を「ヤマセ」と呼ぶ。東北のコメ農家には冷害の元凶として知られる。「平成コメ騒動」をもたらした93年の大凶作で、東北全体の水稲作況指数は56(平年の56%の収量)だったが、太平洋側の青森、岩手、宮城の各県は28、30、37。ヤマセの「威力」を物語る数字だ。
その教訓を生かそうと、仙台管区、函館海洋の両気象台と東北大学がヤマセ発生のメカニズムを共同研究している。毎年6月、函館海洋気象台の観測船で周辺海域の大気の状態を観測、分析中だ。
東北大で研究の先頭に立つ浅野正二教授(62)は地元の宮城県出身。気象庁の研究機関から同大に移籍する際「郷土の役に立つ研究を」とヤマセをテーマに選んだ。
気象庁は関東甲信越の梅雨明けを30日に発表した。しかし、東北地方に関しては「オホーツク海高気圧の影響で、気温が低い状態が続く」として、農作物の管理に注意を呼びかけている。東北大などの研究成果が、ヤマセと闘う農家への「追い風」となる日が待たれる。【行友弥】
毎日新聞 2006年8月1日