【ワシントン及川正也】ベトナム戦争の早期終結を目指していたニクソン米政権が69年秋、核兵器使用を選択肢の一つとして検討していたことを示す米政府文書が7月31日、明らかになった。米ジョージ・ワシントン大学「ナショナル・セキュリティー・アーカイブ」が発表した。ニクソン大統領が72年に核爆弾使用を主張したことはすでに明らかになっているが、今回の文書はニクソン大統領就任1年目にすでに戦術核使用をめぐる議論が政権内部であったことを示している。
文書は69年10月2日付のキッシンジャー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)からニクソン大統領あてのメモや添付書類。当時、ベトナム終戦が最優先課題だったニクソン政権は同年夏、同補佐官らを中心に軍事計画の立案に着手した。
計画の骨格を示した同日付のメモで、北ベトナムへの「短期間の強力な空や海からの攻撃」や「ハノイ指導部への強力な心理的打撃」を提起したほか、メモの付属書類で「我々は核兵器使用を準備する必要があるかどうか」と記されている。
政権初期に核兵器使用が検討されたことは米メディアが報道したことはあるが、公式文書での確認は初めて。大統領と補佐官のどちらが最初に提起したかは不明だが、報道などでは、立案グループの一員だった同補佐官側近が空中核爆破を提案したとされる。
ニクソン大統領は72年4月、同補佐官に「核爆弾を使用したい」と核攻撃を提案し、強く反対されたことが02年2月に米国立公文書館が公開したホワイトハウスの録音テープから判明した。ニクソン政権は最終的に核爆弾の使用を見送った。
毎日新聞 2006年8月2日