「美しい50歳がふえると、日本は変わると思う」。資生堂の広告にこのコピーが登場したのは97年。団塊世代が50代を迎えようとしていた時だ。当時30歳目前の私も、ひざを打った。成熟してこそ、たどりつける美しさがある。世の女性にそんなエールを送った名文句だと、今でも思う。
10年を経て最近、団塊の女性を取材すると「若作りはイヤ。でも若々しくいたい」という声をよく聞く。外見を取り繕う「若作り」に対し、彼女らが言う「若々しさ」は、旺盛な好奇心や行動力など内面の若さだ。
青春時代からジーンズやフォーク・ロックに親しみ、結婚すると「ニューファミリー」と呼ばれる家族像を築いた彼女たちは、「自分が楽しい」を追い求めた最初の女性世代。企業戦士となってすり減る男性たちを横目に、生活を楽しむすべを身につけ、後に「カリスマ主婦」なんてのも生み出した。
聞けば、先のコピーを書いたのは団塊の男性という。けい眼に感服するが、変わる日本で取り残されるのは、実は同世代の男性だったりして。【國保環】
毎日新聞 2006年8月4日