悪性脳腫瘍(しゅよう)のもととなる腫瘍幹細胞(がん幹細胞)の増殖には、メルクと呼ばれる遺伝子の働きが欠かせないとの研究結果を、米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)のグループがまとめ、北米脳神経外科学会で7日までに発表した。メルクが正常な神経系幹細胞の増殖を制御していることは知られているが、腫瘍幹細胞で同様の働きが確認されたのは初めて。治療法や医薬品の開発に役立てたいとしている。
グループは、UCLA小児神経内科のハーレー・コーンブルム医師、同脳神経外科の中野伊知郎医師ら。悪性脳腫瘍から腫瘍幹細胞を取り出して培養し、RNA干渉という手法でメルクの働きを止めたところ、約24~48時間以内に大部分の細胞が死滅。メルクが腫瘍幹細胞の増殖にかかわっていることを突き止めた。
最近の研究で、腫瘍へと成長するのは腫瘍幹細胞のような少数の細胞群であることが判明。腫瘍幹細胞は乳がん、白血病などでも見つかっており、この細胞を標的とすることで効率良く治療できると期待されている。(ロサンゼルス共同)
毎日新聞 2006年8月8日