手足が震え歩行が困難になる「パーキンソン症候群」にかかった弟(55)を殴って死亡させたとして、神奈川県警金沢署は8日、横浜市金沢区洲崎町、会社員、吉田洋一容疑者(57)を傷害致死容疑で逮捕した。
調べでは、吉田容疑者は7日午後6時40分ごろ、自宅で失禁していた弟俊晴さんを風呂場に連れて行き、手で殴って放置し死亡させた疑い。同署で死因を調べている。
吉田容疑者は俊晴さんと足が不自由な母親(84)の介護をしていた。「(俊晴さんに)『お茶をくれ』と言われ、腹が立ってしようがなかった」などと供述、容疑を認めている。
俊晴さんは同市中区内で飲食店を経営していたが、体調を崩し約7年前に廃業。今年3月、飲食店と同じビル内にあった自宅で、仏壇に火のついたろうそくを置こうとして落とし火事を起こしたため、吉田容疑者のマンションで同居していた。7月下旬にパーキンソン症候群と診断されたが、以前から手足の震えなどに苦しみ、火事も手の震えが原因とみられる。
患者団体「全国パーキンソン病友の会」によると、パーキンソン症候群は手足が震え歩行が困難になるなどパーキンソン病と類似症状があるが、国の難病指定を受けておらず医療費公費補助の対象外。同会の河野都事務局長(73)は「薬が切れると動けなくなる場合もあり、介護する家族の負担が大きい。薬代が月10万円以上になることもあり、本人や家族は非常につらい状況だったのではないか」と話している。
同署は介護疲れや医療費負担などが事件の背景にあるとみて、詳しい動機を調べている。【伊藤直孝、野口由紀、池田知広】
毎日新聞 2006年8月9日