埼玉県ふじみ野市営ふじみ野市大井プールで、所沢市立小手指小2年、戸丸瑛梨香ちゃん(7)が吸水口に吸い込まれ死亡した事故で、プールを管轄する県所沢保健所が03年度以降、一度も県の要綱に基づく立ち入り検査をしていなかったことが分かった。吸水口のふたを針金で固定するなど国の施設基準に反した危険なプールを、監督すべき行政が検査もせず見逃していた形だ。同保健所は事実関係を認め、「今年度は8月に(立ち入り検査を)予定していた」などと釈明している。
県などによると、同プールは86年に開業、02年度まで県川越保健所が所管していた。川越市の中核市移行に伴い、03年度から所沢保健所に所管が移った。「県プール維持管理指導要綱」は厚生労働省の基準に準拠しており、学校を除く100立方メートル以上のプールが対象。夏季のみ営業など1カ月以上休業するプールには、施設管理者が開業10日前までに、施設の構造書や仕様書を添付した開設届を保健所に提出することを義務付けている。
保健所は、届出内容が要綱の施設基準に適合しているかを審査し、整備改善の指示や勧告を行う。届出後はプールの「随時監視を行う」としている。管理者の旧大井町とふじみ野市は毎年、開設届を出していたが、所沢保健所は一度も立ち入り検査をしていなかった。
要綱は02年に改正され、吸排水口のふたをネジやボルトで固定することや、遊泳者の吸い込みを防止するための金具設置などが明記された。事故があったプールの吸水口ぶた計6枚は大半が針金で固定され、吸い込み防止金具も設置されていなかった。所沢保健所の白子幹夫・福祉保健部長は「現地での点検は一度も行っていなかった。今後は監視のあり方を検討していきたい」と話している。【高本耕太、浅野翔太郎】
毎日新聞 2006年8月9日