平和宣言を読み上げる伊藤一長・長崎市長=長崎市の平和公園で9日午前11時4分、金澤稔写す
多くの人々が参列して厳粛に行われた平和祈念式典=長崎市の平和公園で9日午前10時53分、徳野仁子写す
世界で核兵器拡散の動きが止まらない中、長崎は9日、61回目の原爆の日を迎えた。爆心地に近い長崎市の平和公園で、市主催の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典があり、市民らが核兵器廃絶と恒久平和の実現を誓い合った。伊藤一長市長は長崎平和宣言で、今年を核兵器廃絶に向けた「再出発の年」と位置づけた。体験を語り伝える被爆者の姿を「平和を求める取り組みの原点」としたうえで「被爆者の願いを受け継ぐ人々の共感と連帯が、必ずや核兵器のない平和な世界を実現させるものと確信している」と述べた。
式典には被爆者や遺族など約4800人をはじめ、小泉純一郎首相や川崎二郎厚生労働相らが出席した。この1年間に死亡が確認された2831人分の名簿3冊を奉納。これで原爆死没者名簿は無名死没者分の白紙1冊を含め計141冊、死没者数は14万144人になった。この後、原爆投下時刻の11時2分から1分間、黙とうをささげた。
伊藤市長は平和宣言の中で、国際司法裁判所が96年に出した「核兵器による威嚇と使用は一般的に国際法に違反する」との勧告的意見を引用。米国など6カ国を名指ししたうえ「米国はインドの核兵器開発を黙認」「核兵器保有を宣言した北朝鮮は、我が国をはじめ世界の平和と安全を脅かしている」と糾弾した。さらにイスラエルとイランの名を初めて挙げ「世界の核不拡散体制は崩壊の危機に直面している」と危機感を訴えた。
「平和への誓い」を読み上げた被爆者代表の中村キクヨさん(82)は、重症者の救護に追われた経験に加え、被爆2世の二男を白血病で亡くした心の傷を初めて公にした。そのうえで「今、戦争のおろかさ、怖さ、むごたらしさを『伝えなければならない』との切羽つまった思いがある。残された人生で出来る限り努力し続けることを誓う」と述べ、語り継ぐ決意を込めた。
市は昨年に引き続き核保有国の駐日大使らを招請し、このうちロシア在大阪領事が出席した。【長澤潤一郎】