【ワシントン吉田弘之】英国の旅客機爆破テロ計画でブッシュ大統領が10日、「イスラム・ファシストとの戦いが続いている」と述べ、イスラム教をファシズムになぞらえてコメントしたことに米国のイスラム系団体が「誤解を招く表現だ」と反発している。
ブッシュ大統領は最近、国際テロ組織アルカイダやレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対し、同様の表現を使い強く糾弾している。ファシズムは、民主主義を排した全体主義的政治理念を指し、ナチス・ドイツやイタリアのムソリーニ政権などに使われている。
今回、大統領が再び「ファシスト」という表現を使ったことに対し、人権団体米・イスラム連絡会議(CAIR)幹部は同日、ワシントンで行った記者会見で「イスラム教とファシズムを結びつける軽率な表現だ」と非難。「今後、ブッシュ大統領と関係当局にこうした言葉を使わないよう要請していく」と語った。
これに対し米MSNBCテレビのインタビューに応じたチャートフ国土安全保障長官は「ウサマ・ビンラディン容疑者の宗教を偽装した全体主義的帝国観を批判したもので、ヒトラーのような古典的ファシズムとは違うと思う」と弁明した。
毎日新聞 2006年8月11日