【ワシントン和田浩明】英国で10日摘発された旅客機爆破テロ計画で、容疑者らが2日以内に爆発物を機内に持ち込む「予行演習」を行う予定だったことがわかった。爆発物はスポーツ飲料容器で偽装され、05年のロンドン同時爆破テロで使用された過酸化物系の液体を使おうとしたとみられる。複数の米メディアが報じた。
AP通信などは米情報機関関係者の話として、容疑者らが予行演習用の搭乗機を選定中だったと報じた。成功すれば数日内に実行に移し、自爆テロで複数の旅客機を飛行中に破壊する計画だったという。
ワシントン・ポスト紙によると、容疑者の関係先で航空会社の時刻表が押収されたが、搭乗券は入手していなかった模様だ。
チャートフ米国土安全保障省長官は10日、米テレビで「この種の陰謀では予行演習や事前調査が行われるのが通例だ」と説明、今回の計画が実行されていれば01年米同時多発テロ級の事件になり、数百人から数千人が死亡していたと推定した。容疑者らについて「非常に能力が高く決意も強固で、ここ数年では最も洗練されたテロ計画を準備した」と述べた。
米当局者が米メディアに語ったところでは、爆発物は過酸化物系。ABCテレビによると、スポーツ飲料容器の底を2重にして爆発物を入れ、発見されにくいよう飲料と同じ色に染める手はずだった。搭乗時の手荷物検査でチェックされても、上部の飲料を飲んで見せれば偽装できるとの判断だったとみられる。起爆には、使い捨てカメラのフラッシュを使う予定だったという。
昨年のロンドンのテロでは「過酸化アセトン」が使われた。過酸化アセトンは、別名をアセトンペルオキシドといい、炭素と酸素、水素が組み合わさった物質。漂白剤として使われる。ニューヨーク・タイムズ紙などによると、原材料の入手や合成が比較的容易だが、非常に不安定で加熱や衝撃、電流で爆発する。米連邦捜査局(FBI)の警戒通達によると、携帯電話の電波でも起爆できるという。
チャートフ長官は複数の米国行き旅客機を飛行中に同時爆破するという今回の計画と、95年に発覚した「ボジンカ計画」が「似ている」とも述べた。ボジンカ計画は世界貿易センター爆破事件(93年2月、6人死亡)主犯格のパキスタン人ラムジ・アーメド・ユセフ服役囚(終身刑判決を受け服役中)らが主導、日本経由などで米国に向かう米民間航空機11機を太平洋上で爆破する内容だった。
また94年12月に沖縄本島沖の南大東島上空を飛行中のマニラ発セブ島経由成田行きフィリピン航空機内で爆発が起き日本人7人が死傷した事件は「ボジンカ計画」の予行演習とみられている。この事件はマニラに拠点を持っていた同服役囚が起爆装置テストのために引き起こした。爆発物は、コンタクトレンズの洗浄液容器に入れられたニトログリセリンだった。
毎日新聞 2006年8月11日