政府と沖縄県などは29日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に関する協議会の初会合を開き、当事者がようやくテーブルについた。代替基地の建設計画について、早期の協議開始を目指す防衛庁に沖縄県が応じたが、県の狙いは建設計画を先送りしつつ、政府が5月に打ち切りを決めた県北部振興策を復活させること。双方の思惑の違いだけが目立ち、どう協議を進めるかの目算すら立たないのが実情だ。
北部振興策の打ち切りには、沖縄県に危機感を持たせることで、復活の見返りとして代替基地受け入れを迫ろうという思惑もあった。決定を主導したのは防衛庁で、沖縄県などは強く反発。普天間移設と切り離して復活させるよう求め、この日の会合出席にも強く難色を示していた。
出席したのは、振興策継続の感触を得られたためとみられる。小池百合子沖縄・北方担当相は会合で「北部振興策は、普天間移設協議が円滑に進む状況の下で着実に実行する」と発言。内閣府も同日、北部振興対策費として例年並みの100億円を概算要求した。
政府側のこうした対応は基地建設への担保を得られないままカードだけ切ることになりかねず、防衛庁の焦りは深い。振興対策費を握る内閣府と防衛庁との路線対立も顕著で、協議会という足場はできたものの先行きはまったく見えていない。【古本陽荘、大場伸也】
毎日新聞 2006年8月29日