冥王星が惑星から外されて以来、日本科学未来館(東京都江東区)を訪れる人が増えている。同館によれば「01年のしし座流星群、02年の田中耕一さん(ノーベル賞)や05年の野口聡一さん(宇宙飛行)が大きく報道された直後に匹敵する」という。上野の国立科学博物館には「冥王星はどうなるの」という電話が相次いだ。教科書会社も対応に忙しい。
ご心配なく。冥王星は昨日も今日も太陽の周りを回り続けている。だから専門家たちは「なぜこんな騒ぎに?」と首をかしげている。
素人と玄人の溝とでも言うのか、世間は騒ぐが専門家に言わせれば「どこが面白いのだ」というニュースはよくある。科学記者としては、記事を読んでもらえるなら御の字。専門家だって、これで宇宙への関心が高まるなら歓迎だろう。
今春、英エディンバラで恒例の国際科学祭を訪ねた。地方都市にもかかわらず、10日間で7万人が訪れた。100以上の催しが娯楽性にあふれていたのに驚いた。
小さければ爆発もOKの実験ショー。人気の美人キャスターが老化とホルモンについて語る講演会。心理学者が手品を交えて参加者をだますショー。5~8ポンド(約1100~1800円)のチケット制なのに、どれも満員札止めの人気だった。
英国民の科学に対する関心が高いからかもしれないが、素人を飽きさせない感覚は見習いたい。そういえば、惑星の運動を数式で解明し、ニュートンにも影響を与えた天文学者ケプラーは、既に17世紀、月旅行を想定したSF小説を著していたという。
毎日新聞 2006年8月30日