北海道稚内市で病院臨時職員の女性(46)が自宅で殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された高校1年の女性の長男(16)が、同じく逮捕された友人で別の高校1年の少年(15)に「現金約30万円を支払う約束で殺害を依頼した」と供述していることが、稚内署の捜査本部の調べで分かった。2人の間で殺害実行を決定したのは事件前日で、殺害を実行した少年に約束した金を殺害後、女性の貯金を引き出して支払う意向だったとみられる。同本部は2人を29日午後、旭川地検稚内支部に送検した。【金子淳】
捜査関係者によると、長男が友人の少年に女性殺害を持ちかけたのは8月上旬で、その後も数回にわたって殺害を持ちかけていたという。依頼を受けた少年は当初「冗談だと思っていた」と供述。しかし、次第に2人の間で話が現実味を帯び、事件前日の26日に殺害が決定したという。
同本部は、27日夜の事件発生時に長男は2階の自室におり、殺害を実行したのは少年一人だったとみている。
長男は約束した現金約30万円は「女性の貯金がある」と、少年に言っていたといい、事前に現金は支払われていないことから、殺害後に女性の貯金を引き出し、約束した依頼金を支払う意向だったとみられる。
凶器の刃物について、長男は「家にあった包丁を使った」としており、少年も「包丁や着ていた服は袋に入れて稚内港に捨てた」としている。同本部は29日午後5時半ごろまで同港の海底を捜索したが、見つかっていない。
同本部は、長男は両親の離婚に強い不満を持っており、こうした不満が殺害依頼につながった可能性があるとみている。通報前に室内を荒らしたり、「金髪の男が逃げた」など虚偽の目撃情報を捜査員に告げるなど捜査かく乱を行うなど計画的にみえる一方で、方法は稚拙であるなど落差があり、同本部は慎重に捜査を進めている。
毎日新聞 2006年8月30日