「海上自衛隊にはいりたい」「天から貰(もら)ったこの命 咲いて散るのが我が人生」--。稚内市で女性(46)が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された高校1年の長男(16)と、別の高校に通う同級生の友人(15)は3月、稚内市内の中学校を卒業した際、文集で将来の自分の姿を語っていた。夢に向かってまい進しようとする長男と、硬派を気取ったフレーズを繰り返した少年。2人の文章からは、母親の殺害を持ちかけたり、30万円の報酬で殺人を引き受けたりした事件の背景は見えてこない。
2人は中学校で同じクラスだった。関係者によると、2人とも両親が離婚し、家庭環境が似ていたという。長男は4年前、離婚によって神奈川県から母親の実家がある稚内市に越してきた。少年は離婚後に父親と同居していたが、中学3年時に父親が亡くなり、母親と2人暮らしになった。
文集の中で、長男は「自分の夢」と題し、「将来、親父と同じ海上自衛隊にはいりたい」「みんなの町や人を守れるような人間になりたい」と語った。「絶対に親父を超えてやろうと思ってます」とも宣言。離別した父親が自身にとって大きな存在だったことをうかがわせるが、母親についての記述はなかった。
一方、少年は「暴走天使」と題した詩を掲載。「天から貰ったこの命 咲いて散るのが我が人生」「一生一度の青春を 地獄で咲かせて天で散る」などと書いた。学校生活の思い出や将来の夢でページをぎっしりと埋めた他の生徒とは異質な内容で、死を軽く見ているように読み取れる半面、愛情に飢えている心理も見え隠れしている。【金子淳】
毎日新聞 2006年8月31日