拓銀巨額融資:全員無罪を破棄、3被告に実刑 札幌高裁
97年に都市銀行としては初めて経営破たんした旧北海道拓殖銀行の巨額融資を巡り、商法の特別背任罪に問われた、元頭取、山内宏(79)▽同、河谷禎昌(さだまさ)(71)▽融資先のソフィアグループ元社長、中村揚一(66)の3被告に対する控訴審の判決公判が31日、札幌高裁であった。長島孝太郎裁判長は、全員無罪とした札幌地裁の1審判決(03年2月)を破棄し、山内、河谷の両被告にそれぞれ懲役2年6月(求刑・懲役5年)、中村被告に懲役1年6月(同・懲役3年)とする実刑判決を言い渡した。
判決によると、山内、河谷の両被告は、それぞれ頭取在任中の94年4月~同6月と94年8月~97年10月、回収見込みがないと知りながら、札幌市北区でリゾート開発計画を進めていたソフィアグループの3社に計約85億7000万円を追加融資した。中村被告はうち約47億円について共謀した。融資は全額回収不能となって拓銀に損害を与えた。
検察側は「両元頭取はソフィアグループへの過去の融資のずさんさや違法性が表面化し、責任追及されることを恐れ、追加融資を実行した」と追及。これに対し、弁護側は「拓銀の信用低下を防ぐのが目的で、正当な経営判断だった」と無罪を主張した。
長島裁判長は「山内被告はずさん融資などの発覚に伴って生じる責任追及などを恐れ、自己保身から融資した。河谷被告も経営責任を追及されるのを回避するため融資した。融資は他から借り入れが出来ないソフィアに金融上の利益をもたらした」と指摘。検察の主張通り、追加融資は両元頭取が自らの保身とソフィアのために行ったと認定した。
3被告は拓銀破たんから1年4カ月後の99年3月に逮捕、起訴された。1審の公判では、両元頭取が追加融資を決定するのに際して(1)自分やソフィアの利益を図る目的があったか(図利目的)(2)頭取としての職務に背く決定をしたか(職務違背性)--の2点が争点となった。
1審判決は「債権回収に真摯(しんし)な取り組みをしなかった」として職務違背性は認定したが、図利目的については「合理的な疑いが残る」と否定、3被告に無罪を言い渡した。検察側控訴による2審は05年12月に初公判が開かれ、即日結審。主に1審判決で否定された図利目的の有無についての判断が焦点となった。【真野森作】
毎日新聞 2006年8月31日