名人戦の毎日新聞単独主催案を表決する日本将棋連盟の臨時総会の開会を待つ羽生善治王将(中央)ら=東京都渋谷区千駄ケ谷で1日午後0時56分、馬場理沙写す
3月末から4カ月余りにわたり将棋界を揺るがせた名人戦主催問題は1日、日本将棋連盟の臨時棋士総会で毎日新聞社の提案が90対101の僅差(きんさ)で否決された。将棋界最高峰の棋戦の行方は連盟と朝日との交渉に舞台が移った。
臨時総会会場には新聞、テレビ各社が詰めかけ、関心の高さをうかがわせた。毎日支持を表明していた森内俊之名人は「なんとも言いようがありません。残念です」とぶぜんとした表情、羽生善治王将も「結果は結果として、受け入れるしかしようがない」と言葉少なだった。
インターネットのブログで苦しい胸の内を将棋ファンに伝えてきた渡辺明竜王は「毎日さんには申し訳ない結果に。ファンの皆さまにもよく思わない人もいっぱいいるだろう。みんなが力を合わせていい方向にもっていければ」と語った。
◇「毎日の名人戦」 ご支援、感謝します…編集局・伊藤芳明
日本将棋連盟の臨時棋士総会は1日、名人戦を単独主催する毎日新聞社の提案を否決しました。約70年前に私たちの先輩が創設した「毎日の名人戦」に注ぐ我々の思いが、十分に理解されなかったのは残念ではありますが、将棋界で最古の伝統と最高の権威を持つ名人戦が、いっそう発展し続けることを、心から願っています。
3月末に連盟理事会が一方的に、「来年度(第66期)以降の契約解消」を通知してきたことに端を発した今回の問題で、棋士の方たちや全国の将棋ファンの皆さまから、温かい激励が私たちに多数寄せられました。お礼を申し上げます。その一つ一つは、損得よりも信義を大切にする将棋文化が確固として存在することを、教えてくれたように思います。
また森内俊之名人、羽生善治王将をはじめ、棋界をリードする有力棋士の皆さまが、我々の提案への支持を表明してくださったことにも、改めて感謝いたします。長年にわたって培ってきた棋士の皆さまとの信頼関係、将棋ファンの皆さまからの応援は、報道機関にとって何物にも代えがたい宝です。
毎日新聞社は今後も、伝統文化としての将棋の興隆に貢献していきたいと思っております。
◇総会終了後に行われた日本将棋連盟理事会の会見の主な内容は次の通り。
米長邦雄会長 今後は朝日と契約を前提に交渉する。しかし、票差が非常に僅差だったので、朝日に(毎日と)共催の意思があるのであれば、それも含めて交渉していく。
--毎日は共催を否定したが……。
米長会長 私どもは毎日とずっと交渉し、共催案も提案した。(毎日は)単独案を示され、それを今日否決した。今度は交渉相手が朝日になるので、朝日にも同じ交渉過程を踏むことになると思う。
--表決は二者択一で、毎日を否決すれば朝日では?
米長会長 毎日の強い希望があり、毎日の申し入れ通りに毎日単独案を投票したのであって、どちらの新聞社を選ぶか、あるいは○か×かという投票ではなかった。
--森内名人、羽生王将が毎日支持を表明していたが、それと逆の結果をどう受け止めるか?
米長会長 非常に難しい質問だ。社団法人なのですべての会員が同じ条件。有力棋士の発言、理事の肩書を持った人の1票というのは少し違うかもしれないが、191票はすべて対等、平等だ。
▽作家・大崎善生さんの話 これまでの経過で、将棋連盟側の手順の間違いなどをのみ込んでくれた毎日新聞の対応に、連盟は感謝の気持ちを持つべきだと思う。昔ならタイトルホルダーが全員反対していることが、その逆になることは考えられなかった。今後は朝日新聞社側の新たな提案が出てくると思われるが、それについても投票にかけるなど、慎重に進めるべきだと思う。