損賠訴訟:電気ストーブで過敏症 販売店に一転、賠償命令--東京高裁
電気ストーブから発生した有害物質で化学物質に対する過敏症にかかったとして、東京都内の男子学生(22)と両親が販売したイトーヨーカ堂(東京都千代田区)に1億円の賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(横山匡輝裁判長)は31日、請求を棄却した1審・東京地裁判決(05年3月)を変更し、約550万円の支払いを命じた。原告側弁護士によると、家電商品から生じた健康被害について、販売店に賠償を命じた判決は珍しい。
判決によると、ストーブは台湾のメーカーが中国で製造し、メーカーの日本法人「燦坤(さんくん)日本電器」が輸入した「ユーパTSK-5302LG」。00年9月~01年4月に全国で1万4034台が販売され、5341台はイトーヨーカ堂で扱われた。学生の父が01年1月に購入し、学生は異臭を感じながら約1カ月自室で使ったところ、呼吸困難や手足がしびれる症状が出て「化学物質に対する過敏症」と診断された。
判決は、学生側の苦情により製造・販売側が専門機関に依頼した調査の結果などを基に、ストーブ前面の網目ガードの塗装が高温で熱せられ、アセトアルデヒドなどの化学物質が発生、学生の症状が生じたと認定した。
日本法人には異臭などの苦情が他に68件あり、イトーヨーカ堂は「商品の安全性確保のため製造元も調査している」などと宣伝。判決は「同社はこの苦情も知り得たし化学物質の発生を予想できた」と指摘。「学生側の苦情より前に検査確認し、結果を基に販売を中止するなどの義務を怠った」と判断した。
学生側はメーカーにも賠償を求め、係争中。【高倉友彰】
◇イトーヨーカ堂の話
上告の方向で検討してまいります。
毎日新聞 2006年9月1日 東京朝刊