全国の建設工事業者らでつくる「全国建設工事業国民健康保険組合(建設国保)」=東京都中央区=の保険料約4000万円を着服したとして、警視庁久松署が元理事長(75)を業務上横領容疑で書類送検していたことが分かった。建設国保は別の元幹部を含めて総額約14億円の不正流用が発覚し、東京都は補助金の交付を停止している。
同署などによると、元理事長は、理事長と建設国保都支部第1出張所長を兼任していた01~02年、同出張所の被保険者が納付した保険料計約4000万円を着服した疑い。着服で発生した損失を別の保険料で穴埋めし、不正流用の総額は96~02年で計1億4500万円に上るとみられる。
高齢や返済を始めていることなどを理由に同署は逮捕を見送り、今年6月に書類送検。東京地検は先月、同様の理由で起訴猶予処分にした。
建設国保は70年に設立され、被保険者は大工、土木、造園、左官などの業者や家族約24万人。元理事長は93年、旧労働省から卓越した技能者を表彰する「現代の名工」に選ばれたとびの第一人者。元理事長らによる流用は、02年10月に始まった都の検査で発覚。都は03年3月に業務改善命令を出し、元理事長は同年4月に辞任。都が同年7月に刑事告発していた。
建設国保の関口日出夫事務局長は「再発防止へ向けて改善に取り組んでいる。不正流用された被害金の返済も進んでいる」と話している。【三木陽介、石丸整、永井大介】
毎日新聞 2006年9月4日