横浜市瀬谷区の産婦人科病院「堀病院」の無資格助産事件で、神奈川県警の家宅捜索容疑となった03年12月の女性(当時37歳)の出産を巡り、大学病院の医師が女性を診たのは出産の約10分前で、取り上げ後は分娩室外に出ていたことが分かった。堀健一院長(78)はこれまで、出産当日朝からずっとこの医師が一連の分娩経過を診ていたと説明していた。分娩の経緯について堀院長の説明に虚偽の内容が含まれている疑いが強まった。
神奈川県警などの調べでは、女性は03年12月29日、堀病院で女児を出産した際に大量出血し、大学病院で治療を受けていたが、04年2月15日に多臓器不全で死亡した。
出産の経緯について、堀院長は8月24日、報道陣に「熟練の立派な医師がもう朝からいた。その先生が時々診て当直してくれて夜取り上げた」「取り上げから何から全部医師が責任を持ってやられていた」と説明。翌25日の会見では「医師は時々はいたのではないかと思う。ちょっと分からない」と話したが、前日の説明は否定しなかった。
一方医師は、毎日新聞の取材に「分娩に立ち会っただけで経過には関与していない」と院長の説明を否定した。女性を初めて診たのは出産直前の午後7時半ごろで、同41分に女児を取り上げた後は、別の外来診察のため准看護師に指示した上で分娩室から出たと説明。また女性を初めて診る際、その前に診察していた同病院副院長からの引き継ぎはなかったという。
医師は女性の大量出血後の対応について、「出血性ショックで適切に搬送しており、問題ない。詳しいことはコメントできない」と話している。
毎日新聞の質問状に対し、堀院長は「捜査中なので、当院としてはコメントを差し控えさせていただく」と文書で回答した。【伊藤直孝、堀智行】
毎日新聞 2006年9月4日